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舞台はサンパウロの「ボールの家」。建築とアートの調和を楽しむ第5回「アベルト」展をレポート

ブラジル・サンパウロを主な舞台にして開催される、著名建築家が手がけた家を舞台に展開される展覧会「アベルト(Aberto)」。その5回目が建築家エドゥアルド・ロンゴの私邸を舞台に開催中だ。会場の様子を、ブラジルを拠点とするフォトグラファー/ジャーナリスト・仁尾帯刀のレポートでお届け。※3月29日24時まですべての方に全文お読みいただけます

文=仁尾帯刀

カーザ・ボーラをバックにキュレーター3人と建築家。左端がフィリペ・アシスで、右から2人目がエドゥアルド・ロンゴ ©Ruy Teixeira

 今年で5回目を迎えた展覧会「アベルト(Aberto)」がサンパウロ市で開催中だ。今回の会場に選ばれたのは、サンパウロで活動中の建築家・エドゥアルド・ロンゴの私邸「カーザ・ボーラ(ボールの家)」。ロンゴは、オスカー・ニーマイヤーやル・コルビュジエのような世界的知名度はないが、サンパウロの商業エリアに位置するその私邸は、直径8メートルの球体のアパートの模型を屋上に冠している異質な外観から、日頃エリアを出入りする市民にはよく認知されており、サンパウロの建築ファンなら一度は入ってみたい建築だ。

「アベルト」が生み出してきたもの

 「アベルト」の第1回は2022年、オスカー・ニーマイヤーがサンパウロ市内に建てた邸宅で行われた。以降、サンパウロを舞台に開催されてきたが、昨年の第4回は、フランスとの外交200周年を記念する「フランス・ブラジル交流年」の公認文化事業の一環としてル・コルビュジエが甥ピエール・ジャンヌレとの共働でパリに建てたメゾン・ラ・ロッシュで開催。世界的に著名な近代建築の巨匠の建築作品の中で行われたことにより、ブラジル国内でのアベルトの注目度が上がった。

展示会場2階の風景。混雑を避けるため時間ごとの来場者の人数制限を行って公開 撮影=仁尾帯刀

 アベルトの発起人兼キュレーターのフィリペ・アシスがこのイベントを発案したのはサザビーズ・インスティチュート・オブ・アート・ロンドン校のアートビジネス・マスタークラス在籍中の2020年だった。その動機について、アシスは次のように語る。

 「私は以前、マーケティングと不動産の業界で仕事をしていたのですが、かねてから憧れていたアートビジネスに転身しました。ちょうどパンデミックで世界が閉ざされた時期に、自分が不動産ビジネスに携わった影響もあって、著名な建築家の作品を開放して行うアート展を思いついたのです。有名な建築作品である家で行うアート展はほかにもありますが、アベルトのように継続して取り組む企画はほかにないでしょう」。

 オスカー・ニーマイヤー建築に続く第2回はサンパウロ大学建築学部の校舎を設計したヴィラノヴァ・アルチガスが生前に手がけた邸宅で行われた。リオデジャネイロ出身のニーマイヤーが曲線を多用したのとは対照的に、アルチガスは強い直線が特徴のひとつであるブルータリズムの流れを汲むサンパウロ学派を主宰する建築家だった。このような個性的な会場に展示する作品をどのような基準で選んでいるのだろうか。

 「展示作品の多くは会場となる建築との調和を考えて選んでいます。初回はオスカー・ニーマイヤーの人物像とその生涯が主題で、アルチガス建築での第2回は幾何学的な作品を多数展示しました。曲面壁とガラスを多用したニーマイヤーの邸宅ではより顕著でしたが、ホワイトキューブとは異なる邸宅ゆえ展示上の制限があり、そのため、出展アーティストに会場の条件に合った作品を新たに制作してもらう場合も多いです。このたびの第5回では、未来的な球体の家や廃棄物の再利用に積極的だったロンゴの創作と共鳴する作品を多く展示しています」。

編集部