「スープはいのち」(21_21 DESIGN SIGHT)開幕レポート。スープという「最小の食」から、生の根源を問い直す【2/3ページ】

スープと人との関係性を見つめる

 本展は、たんにスープの完成図やレシピを紹介する展示ではない。スープという最小の食を糸口に、五感を通じて衣食住の根源に触れようとする試みとなる。そのコンセプトにもとづき、会場前半で展開されるのは、母体の鼓動に包まれるようなインスタレーション《はじまりのスープ》だ。このタイトルは、胎児を育む「羊水」を指しており、展示空間の前には、羊水の塩分濃度を示す0.9パーセントの塩が盛られている。

《はじまりのスープ》の展示風景。中央では羊水と同じ塩分濃度を再現した水に繭の糸が垂らされる。空間では母体を意識させる鼓動も低く響き渡る
塩分濃度0.9パーセントの水に含まれる塩

 同施設でもっとも広い展示空間で目を引くのは、和紙と土を混ぜ込んだ「土紙(つちがみ)」でつくられた大屋根だ。この屋根は、太古の煮炊きや食卓の原風景を象徴している。屋根の下には、スープにまつわるエピソードを巡る食卓のような展示や、高度経済成長期の公団住宅のキッチンをモチーフにした「遊ぶ」展示などが展開されている。

展示空間を横断する大屋根
高度成長期の公営団地のキッチンの再現。「料理して食べる」という行為を発見の場と捉えるような仕掛けも随所になされている

 また会場には、スープと人との関係を紐解く作品や映像インスタレーションも並ぶ。「野焼き」の器からスープが生まれる根源的な風景を表したものや、野菜からスープやテキスタイルが生成される工程を追い、「内と外から身体を包む」ことを可視化したもの、そして生命のあわいに必要とされる「重湯」のつくり方を器とともに紹介する映像作品などが展示されている。さらに、旅とともに形を変えてきたスープの在り方を、パッケージや広告の変遷とともに俯瞰する展示も興味深い。

「重湯」の映像作品
「旅とスープ」と題された、スープのパッケージや広告展示