第2部では、新版画の立役者、版元の渡邊庄三郎(1885〜1962)と庄三郎のもとに集まった画家たちの作品が紹介される。日露戦争(1904〜05)を機に、浮世絵は完全に衰退の一途をたどり、写真にその役割を取って代わられてしまった。質の悪い複製や贋作が出回っていた状況を憂い、良質な新しい時代の版画を再興しようと考えたのが庄三郎だった。庄三郎は、従来の浮世絵と一線を画す表現を行った清親を「新版画」の先駆者と捉え、外国人画家、日本画家、洋画家などと協働して「新版画」の活動を展開した。
会場では5名の絵師が紹介されている。最初に、外国人画家であるチャールズ・ウィリアム・バートレット(1860〜1940)の作品が展示されている。構図には浮世絵の影響が見られるが、水彩画のような明るい色調をはじめ、新たな表現を浮世絵と融合させようとする意向が感じられる。
高橋松亭(1871〜1945)は、「新版画」の前身となる「新作版画」の誕生に大きく貢献した人物。「新作版画」は海外需要に合わせ輸出用につくられたもので、「新版画」よりもサイズは小さい。そんな松亭が初めて「新版画」に取り組んだ「都南八景之内」シリーズも紹介されている。
美人画で有名な伊東深水も、新版画を代表する絵師のひとりだ。会場に展示されている「近江八景」シリーズは、のちに新版画の代表的作家として人気を博す川瀬巴水が、新版画に携わるきっかけとなった作品群でもある。
洋画家として知られる吉田博は、その描写力をかわれて新版画の制作を依頼された。3度の渡米を経て、庄三郎のもとを離れ、私家版の新版画制作にも挑戦している。会場では、同じモチーフでありながら、庄三郎のもとでつくった作品と私家版の作品が比較できるようになっている。
最後に、新版画を代表する絵師・川瀬巴水が紹介される。深水の「近江八景」シリーズに感銘を受けた巴水は、那須塩原の風景を題材にした塩原三部作を制作。これが高く評価され、次々と新版画を手がけた。本展では、日本中の名所を旅しながら制作した「旅みやげ第一集」シリーズ、東京の風景を取り上げた「東京十二題」シリーズも紹介されている。いずれも巴水が現地に足を運び見つけた一場面が題材となっており、等身大の目線で切り取られた景色からは、当時の様子が生き生きと伝わってくる。

National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O. Muller Collection 版元=渡邊木版美術画舗

本展の最後に紹介されているのは、巴水の「三菱深川別邸の図」シリーズだ。モチーフとなった「深川親睦園(現在の清澄庭園)」は、三菱財閥を創設した岩崎彌太郎(1835〜85)が1880年に開園し、三菱社員の慰安や迎賓館として利用されたものだ。その後庭園が整備され別邸が設けられた本施設を、巴水が全8図のシリーズとして描いている。三菱が創設した本館を舞台とする展覧会の締めくくりにふさわしい作品と言えるだろう。

新版画に魅せられたミュラーが築いたコレクションの重厚さを感じながら、小林清親から新版画までの風景版画の流れを知ることのできる本展。2つの意味の「トワイライト」を意識しながら、作品と対峙してみてほしい。
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