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「アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち」(東京オペラシティ アートギャラリー)開幕レポート。遠くの悲劇を、私はどう見るのか【2/3ページ】

あなたと私、そして世界のすべての人たち

 展覧会の冒頭では、ジャーの初期作品が紹介されている。例えば《アメリカのためのロゴ》(1987)は、ニューヨークに移住して数年後、彼が受けた衝撃をもとに制作された、タイムズ・スクエアでの上映作品だ。「アメリカとは本来、大陸全体を指す言葉であり、チリ出身の自分もラテンアメリカ人のひとりだ。しかし合衆国の人々は、自分たちだけを“アメリカ人”ととらえ、それ以外の国々を不可視化している」。作品では、アメリカ大陸の地図とシンプルな言葉を用いながら、「アメリカ」という言葉が本来持つ多様性を取り戻そうとしている。

展示室Aの風景より、左から《今は火だ》(1988)、《彼らにも考えがある》(2012)、《アメリカのためのロゴ》(1987)
展示室Aの風景より、《アメリカのためのロゴ》(1987)

 展示室BからEでは、四大陸の各地で起こっている問題をテーマとした作品が続く。展示室Bで紹介されるのは、ブラジル北東部のセーラ・ぺラーダなどを題材とした「ゴールド・イン・ザ・モーニング」シリーズだ。1985年に現地を訪れたジャーが目の当たりにした、金鉱に集まる貧困層の人々の過酷な労働環境が記録されている。

 なかでも、写真を鏡に映し出した作品は印象的であった。通常の鏡と異なり、鑑賞者が自発的に覗き込まなければ、作品を見ることは難しい。当時、「社会はあまりにもナルシスティックになった」と感じていたというジャーは、その象徴とも言える鏡を用い、「自分を見るための道具」を「他者を見るための装置」へと反転させた。

展示室Bの風景より、「ゴールド・イン・ザ・モーニング」シリーズ。右(1985 / 2007)は、ジャーが撮影した金鉱の写真群を鏡に写した作品

 この鏡の装置をさらに展開させたのが、展示室Cに展示されている《エウロパ》(1994)だ。本作は、第二次世界大戦後、ナチス・ドイツの占領を経た多民族国家ユーゴスラヴィアで起こったボスニア紛争を主題としている。鏡の前に置かれたライトボックスには戦火を思わせる炎が表され、その裏面には現地の人々の姿を写した写真が隠されている。「ゴールド・イン・ザ・モーニング」同様、鑑賞者が身体を動かして見ようとしなければ全体像を見ることができないこの仕掛けには、遠く離れた地で起こる惨状について「一人ひとりがよく見て考える必要がある」というジャーの思想が反映されている。

展示室Cの風景より、《エウロパ》(1994)
展示室Cの風景より、《エウロパ》(1994、部分)。炎の裏側では、現地の人々の状況を伝えている

編集部

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