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「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」(東京都現代美術館)開幕レポート。ソル・ルウィットの開かれた思考を追体験する【3/3ページ】

 展覧会後半では、ルウィットが自身のアイデアを伝えるうえで重要視していた「アーティスト・ブック」の数々が紹介されている。前半のフィジカルな体験とは対照的に、ここでは思考の内側へと潜り込むような鑑賞体験が促される。貴重な資料も多く展示されているため、前半の展示を振り返りながら、じっくりと向き合いたい。

展示風景より

 本展の開催意義について、楠本はまず「この展覧会はルウィットを讃えるためのものではない」と強調する。ルウィットの初期作品は「オープン・ストラクチャー」と名付けられており、不完全なシステムが、ある意味で“開かれた”状態にあることを示している。展示作品も完成品というより、思考の痕跡や行為そのものであり、それらをたどることで、鑑賞者は様々な角度からルウィットの思考にアクセスすることができる。

 アイデアや指示書を通じて、それらを他者と共有することを重んじたルウィット。その考え方に多層的に触れることができる点こそが、本展の大きな魅力であり、重要なポイントとなっている。

展示風景より

 なお、同館では本展以外にも、Tokyo Contemporary Art Award 2024–2026 受賞記念展「湿地」(12月25日〜2026年3月29日)が開催中。5回目の受賞者である梅田哲也と呉夏枝よるもので、近年「海路」や「水路」など、水にまつわる考察を作品の重要な要素とするふたりによる展示に注目だ。また、開館30周年記念 MOTコレクション「マルチプル_セルフ・ポートレイト 中西夏之 池内晶子 —弓形とカテナリー」(12月25日〜2026年4月2日)も同時開催されているため、あわせてチェックしてほしい。

「Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 受賞記念展『湿地』」展示風景(東京都現代美術館、2025)より 撮影=髙橋健治 画像提供=Tokyo Arts and Space
「Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 受賞記念展『湿地』」展示風景(東京都現代美術館、2025)より 撮影=髙橋健治 画像提供=Tokyo Arts and Space

編集部