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台中市立美術館開幕レポート。芸術都市・台中にSANAA設計の新たなランドマークが誕生【4/6ページ】

 次の章「Recalling Fables」では、アーカイブや民間伝承、神話を手がかりに、世界との関係を再想像する試みがなされている。この展示室でまず目につくのは、1階部分から続いているアドリアン・ティルソ《Post-Museum Evidences(the Drill)》のドリル状の作品だ。床から天井までを貫き、本作が上下に続いていることが強烈に印象づけられる。

展示風景より、アドリアン・ティルソ《Post-Museum Evidences(the Drill)》(2025)

 シュー・チアウェイは、オランダ植民地支配下にあったインドネシアにおけるゴム産業の搾取の歴史を主題とする、3チャンネルの映像インスタレーション《Rubber Balls》(2025)を制作。インドネシア産ゴムシートによって構成された3チャンネルの映像インスタレーションは、美術館コレクションに含まれるオリジナルのドキュメンタリー映像、オランダ人とインドネシア人の子供たちを描いたAI生成イメージ、そして高次元空間におけるAIの思考のあり方という3つの位相を映し出す。

展示風景より、シュー・チアウェイ《Rubber Balls》(2025)

 本展唯一の日本人作家である鈴木悠哉は札幌を拠点とするアーティスト。インスタレーション《In the Realm of Last Things》(2025)は、展示室の外の廊下で展開されており、本作は台北および台中での滞在中に収集された海洋ゴミや都市の廃材を使用して制作された。当地の海水を利用した独自のエコシステムを館内に構築。光をふんだんに取り込む館の建築と調和した空間をつくりあげた。

展示風景より、鈴木悠哉《In the Realm of Last Things》(2025)