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台中市立美術館開幕レポート。芸術都市・台中にSANAA設計の新たなランドマークが誕生

台湾・台中に、台中市立美術館と台中市立図書館を一体化した新たな文化施設「台中緑美図(Taichung Green Museumbrary)」が開館した。本施設の概要をレポートしたい。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

台中緑美図の台中市立美術館の屋上ガーデン

 台湾中部の都市・台中に、新たな文化施設「台中緑美図(Taichung Green Museumbrary)」が12月13日、開館した。本施設の概要と、こけら落としとなる国際チームによる展覧会「A Call of All Beings: See you tomorrow, same time, same place」をレポートしたい。

台中緑美図の外観 Image courtesy of Taichung Art Museum. © Iwan Baan

 台中緑美図は、台中市立美術館と台中市立図書館を一体化した台湾初の複合型文化拠点だ。建築設計は、日本の建築ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が、台湾のリッキー・リウ・アソシエイツとの協働で手がけている。総床面積は約5万8000平方メートル、SANAAが手がける文化プロジェクトとしては、これまでで最大規模のものとなった。

台中市立美術館のファサード

 本施設は、中央公園に隣接する旧軍用空港跡地を活用しており、「公園の中の図書館、森の中の美術館」というコンセプトのもとで設計された。建物は大小8つのブロックで構成され、外装はガラスや金属で覆われたうえで、白いアルミメッシュのファサードが施され、外光を館内に積極的に取り入れる構造となっている。

台中市立美術館

 施設は高床構造となっており、1階のロビーは都市や公園とフラットにつながった、周囲の環境と調和した空間となっている。ここでは、コミッションとしてつくられた、土木建築家として経歴ももつアドリアン・ティルソの巨大な作品《Post-Museum Evidences(the Drill)》(2025)が来場者を迎える。水を湛えた皿状のオブジェクトから階上へと伸びるドリルのような本作は、1階部分だけでなく、その天井に突き刺さり、そのまま階上の2つの展示室を貫いている。その材料には美術館の建築で使用されたあらゆる素材が使われており、洗練されたSANAAの建築の内部に土地改良と建築という行為を生々しく露出させる。

展示風景より、右がアドリアン・ティルソ《Post-Museum Evidences(the Drill)》(2025)