「art venture ehime fes 2025」が開幕。藝大と協働で落合陽一ら24組が参加【6/6ページ】

今治市エリア・丹下建築ゾーン

 最後に今治市に移動する。建築家の丹下健三が少年時代を過ごした土地であり、今治市庁舎、今治市公会堂、今治市民会館というひとつの広場を囲む3棟をはじめ、市内には7建築と1文学碑が残されている。今回作品を発表したのは、建築家のキャズ・T・ヨネダ。今治市の伝統工芸品である菊間瓦を駆使し、職人たちと共同で《丹下健三頌:発露のキセキ》を手がけた。天井に設置された瓦製の丹下作品の再現彫刻と、床に置かれた丹下のインスピレーションソースの今治市大島の大島石でつくられた立体作品が紐でつながり、オーガンジーの布を通して関係性を見せるインスタレーションを今治市民会館に展開する。母親の出身が広島で、最初の建築体験が広島平和記念史料館だったというヨネダ。

 「今回のリサーチを通して、丹下さんが天文ボーイだったということを知り、建築だけに固定されていない視点をもっていたということで天球儀の模型を置かせていただいたり、村上水軍の船が高松の体育館に読み取れたり、必ずしも意識的に見ていたものだけが彼の建築の造形的を生み出していたわけではないのを感じました。そこで、丹下さんの無意識的な部分、人間味のようなものも表せればと考えました」。

展示風景より、キャズ・T・ヨネダ《丹下健三頌:発露のキセキ》
キャズ・T・ヨネダ
今治市公会堂

 このほか、とべもり+(プラス)エリアのえひめ森林公園ゾーンや、今治市エリアの里山ゾーンでも設置型の作品展示が開催。またパフォーマンスやワークショップなどのイベントが期間中、各会場で開催される。 

「art venture ehime fes」の次回は、2028年の開催が決まっている。同年に愛媛県で開催されることが内定している国民文化祭と併せて行う大規模なものとなる予定だ。

 愛媛で始まったアートの冒険を引き続き追いかけていきたい。

愛媛県庁

編集部