「art venture ehime fes 2025」が開幕。藝大と協働で落合陽一ら24組が参加【3/6ページ】

とべもり+(プラス)エリア・愛媛県総合運動公園ゾーン

 愛媛県立とべ動物園から徒歩15分ほどの場所に位置する愛媛県総合運動公園。愛媛FCの本拠地である「ニンジニアスタジアム」やテニスコートなどが集まるこの公園には、「古代の森」と名付けられたエリアがある。そう、ここは古墳が発掘されたエリアなのだ。「古墳で作品を発表したい」と、公募で参加したのが落合陽一×笹村白石建築設計事務所だ。

展示風景より、落合陽一×笹村白石建築設計事務所《色2池:空を溶かす、1500年の眠りの鏡》

 建築設計を担当したNOIZのメンバーとして、落合陽一の大阪・関西万博シグネチャー・パビリオン「null2」を担当した建築家の笹村佳央が、同じく建築家の白石洋子と愛媛県で独立し、公募への参加が決まった。今回会場として使用した古墳を含む大下田(おおげた)古墳群の近隣からは、鏡も出土していた。落合はこう続ける。

 「土の中から出てきたものを叩いて、火であぶり、水で冷やして磨くことで鏡が生まれたと思うのですが、そう考えると、古墳時代には土の性質をいろいろなもので変えてきたと感じます。今回のテーマが古墳と鏡と、その周囲の自然ということで、このようにアートとテクノロジーの融合によって鏡が震える作品が生まれ、それを歴史的な地層にもってきたときに、改めて古墳がどういう風景に変わるかというのが、今回一番面白いところだと思います」。

左から笹村佳央、落合陽一、白石洋子

 重低音が古墳から響き、その前に設置された鏡の上に乗ると、足元が音と連動して振動する。鏡の表面に取り込まれた周囲の景色が震、大地の振動が自分の身体を通して空とつながるような体感が生まれる。身体を通して地面と空のつながりを感じたのは、古代の人々が踊り、トランスを目指して得た感覚と同様のものではないだろうか。古代の人々とそんな時空を超えた感覚の共有を想起させる作品となっている。

「楽器のようなものだと強く感じた」と、落合は古墳について話す

 落合陽一×笹村白石建築設計事務所の《色2池:空を溶かす、1500年の眠りの鏡》よりほど近くに、SHAO YINGYI(ショウ・エイギ) / 隅田うららの作品《記憶の積層/Unearthing Memory LAYERS》が展示されている。東京藝術大学大学院美術学研究科Global Art Practice専攻にともに在籍するふたりによる、初のコラボレーション作品だ。古墳に隣接する「記憶の積層」から鑑賞者が樹脂の棒を引き出すと、祈りの象徴の変遷や、調味料の発達、愛玩物の変化といった、古代—近代—現代という時代の変遷が表現されている。土地のリサーチと想像が結びつき、作品の魅力が生まれている。

展示風景より、SHAO YINGYI / 隅田うらら《記憶の積層/Unearthing Memory LAYERS》
左より、隅田うらら、SHAO YINGYI

編集部