「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」開幕レポート。アートとの偶然の出会いを通じて「環境」について思考する【3/9ページ】

兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)

 六甲山の歴史、植物などについて学ぶことができる「兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)」の周辺にも作品が並ぶ。

 岡留優の《別荘》は、避暑地として知られる六甲山で発展した別荘文化に着想を得ている。会期中、実際のサイズの6分の1のスケールでつくられた別荘を模したドールハウスを、2週間に1回の頻度で岡留が中身を紹介するパフォーマンスが行われる。パフォーマンスはライブ配信され、公式サイトのイベントページからも見ることが可能だ。

展示風景より、岡留優《別荘》(2025)

 石島基輝は、機械式時計を再構築した《風の中のClock systems》を展開。過去人々は太陽光や風などの自然物から時間を認識していたが、機械式時計が誕生したことで人工物によって時間を判断するようになった。それを人間中心的な意識のはじまりだと考える石島は、機械式時計を解体し、風で動くインスタレーションに生まれ変わらせた。

展示風景より、石島基輝《風の中のClock systems》(2025)

ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム、新池、六甲高山植物園)

 そして本芸術祭のなかでも、作品数がもっとも多いミュージアムエリアへと続く。ROKKO森の音ミュージアムに展示されるのは、本展のキービジュアルにもなっている奈良美智の《Peace Head》。本作品の原型は、作者の手の中で造形された手跡の残る粘土だ。「傲慢になりがちな人間は、より大きな存在である自然のなかの一部である」というメッセージが込められた本作は、東日本大震災を契機に、耐久性のあるブロンズやアルミニウムという素材での制作を開始した奈良作品を、神戸で起きた震災から30年が過ぎた今年にこそ迎えるべきだ、という思いから展示が決まったものである。本作は六甲山のシンボルとなり、今後常設展示される。

展示風景より、奈良美智《Peace Head》(2025)

編集部