「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」開幕レポート。アートとの偶然の出会いを通じて「環境」について思考する【2/9ページ】

六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅・山上駅)

 まず観光・登山で六甲山の山頂へ向かう玄関口となる六甲ケーブル。ここは麓の「六甲ケーブル下駅」と山上の「六甲山上駅」の間を繋ぐ路線だ。この場所で展開されるのは、須田悦弘の《ササユリ, ノブドウ, リンドウ》。駅舎のなかに3点の作品が設置されているが、パッと見ただけでは見つけることは難しい。よく目を凝らして探してみると、数センチメートルしか開かない小さな扉の向こうにササユリの立体作品を見つけることができる。

展示風景より、須田悦弘《ササユリ, ノブドウ, リンドウ》(2025)

天覧台

 続いて、六甲山の代表的な眺望スポットである天覧台エリア。700メートル近い標高にある天覧台からは素晴らしい神戸の景色を眺望できる。ここに設置されているのは、山田毅の《自動れきしはんばいき》。山田は京都を拠点に活動しており、ユニット「副産物産店」、フリーペーパーを扱う書店「只本屋」などのプロジェクトを手がける。本作では「六甲山の歴史を売る」というコンセプトのもと、廃材でつくった小屋の中で、六甲山のあらゆる場所で収集したものを販売している。参加者は、「購入して持ち帰る」という行為によって六甲山の歴史を自身の生活に持ち込むことになる。

展示風景より、山田毅《自動れきしはんばいき》(2025)

 また、インド系タイ人のアーティストであるナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクションの《神戸ワーラー》もこのエリアに出展されている。神戸市北野町でのリサーチにより制作された本作は、移民が集まる土地柄による神戸の多文化性になぞらえてつくられた。大きな油彩画には、過去から現在にかけて神戸と海外を行き来した様々な人々や文化の様子が描かれている。また、そこに登場する人々が六甲山の神様にむけた手紙を読み上げる映像作品や、神戸の未来にむけたワークショップも開催され、複数のメディウムによる作品展開が見られる。なお本作は、ナウィンの娘との初の共同制作となっている。

展示風景より、ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクションが行うワークショップ「あなたの『ワーラーの旗』をつくろう!」の旗がなびく様子

編集部