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「これからの風景 世界と出会いなおす6のテーマ」(静岡県立美術館)会場レポート。伝統的「風景」から現在、そして未来の絵画を思考する【2/8ページ】

 展覧会は6章構成。第1章「記憶―心にふりつもる風景」は、谷川俊太郎の詩「思い出の風景」の展示から始まる。歌川広重、ウィリアム・ターナー、アンセル・アダムス、雪舟といった、風景を題材にした作品を残した芸術家たちの名前を出しながら、風景の普遍性と個人性を同時に提示するこの谷川の詩は、風景画という長い歴史を持つジャンルを再考しようという、本展の所信表明として機能している。なお、この詩の左右には関連するコレクションの作品も並べられており、本館だからこそできる体感にひもづいた展示が行われている。

展示風景より、中央が谷川俊太郎の詩「思い出の風景」

 この第1章ではまず、日本の伝統的な絵画における富士山や武蔵野といった古来の歌枕の名所、中国の瀟湘八景といった伝統的な画題を扱った狩野派をはじめとする江戸絵画を紹介。八景という記号が牽引する、名勝のイメージを見ることができる。

展示風景より、左から作者不詳《武蔵野図屏風》(17世紀)、狩野探幽《瀟湘八景(八幅対のうち二幅)》(1662-74)

 さらに、江戸絵画と時を同じくする350年ほど前の西洋絵画も紹介。オランダのヤーコブ・ファン・ライスダールやヤン・ファン・ホイエン、イタリアのガスパール・デュケらの描いた田舎や港の風景は、同時代の日本の画と比べると、現実をありのままに写したような印象を受けるが、空に浮かぶ雲やせり出す樹木、陰影などの演出により、劇的かつ叙情的に風景を描こうとしていることがわかる。

展示風景より、左からヤーコブ・ファン・ライスダール《小屋と木立のある田舎道》(1670年代)、ヤン・ファン・ホイエン《レーネン、ライン河越しの眺め》(1648)、ヨーハン=バルトールト・ヨンキント《オンフルール近郊の街道》(1866)