会場に並ぶのは、菱川師宣、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国芳、渓斎英泉など、江戸時代初期から幕末に制作された春画約150点。そのごく一部を紹介したい。

例えば歌麿の《願ひの糸ぐち》(1799)は、《歌まくら》に次ぐ歌麿による春画の名作だ。また北斎の《万福和合神》(1821)は北斎らしさが全開の一作。春画史においても屈指の名作とされる本作は、裕福な家に生まれたおさねと、貧しい家に生まれたおつびという、対照的な境遇のふたりの少女の性遍歴を、13歳から30歳まで交互に綴った物語だ。


絵師であり、遊女屋も営んでいた渓斎英泉。《美多礼嘉見》(1815)はその初期の春画作品であり、画題は「乱れ髪」を万葉仮名風にしたもの。扉絵に女性の大首絵を、裏扉絵にはその女性の陰部をアップで描く「大開絵(おおつびえ)」を施した。

展示は能舞台だけでなく、徒歩すぐの第2会場(歌舞伎ソシアルビル 9階)にも広がる。ここでは歌川国虎の《センリキヤウ》(1824)に注目したい。同作は、2図で1組をなす作品。ひとつは俯瞰図で、もうひとつは男女がまぐわう場面だが、じつは俯瞰図のほうにも密かにまぐわう男女の姿が細かく描きこまれている。



人々の情愛と欲望が渦巻く歌舞伎町という街。膨大な数の春画を通して、江戸時代の文化と現代のエネルギーの交錯を感じたい。



















