2019.3.13

シャネルで堪能する春画と写真の世界。「ピエール セルネ & 春画」が開幕

昨今、世界的に大きな注目を集めている「春画」。その代表作とともに、フランス人パフォーマンスアーティストであり写真家のピエール・セルネの写真作品「Synonyms(類似表現)」シリーズを紹介する展覧会「ピエール セルネ & 春画」が東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開幕した。

会場風景
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 2013年にイギリスの大英博物館で開催され、9万人もの入場者数を記録した「春画 日本美術における性とたのしみ」展。そして、15年に東京・目白の永青文庫で開催され、20万人以上を集めた日本初の「春画展」。この流れに続く展覧会が、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開幕した。

 「ピエール セルネ & 春画」と題された本展は、その名の通り春画だけの展覧会ではない。会場に並ぶのは、日本を代表する春画と、フランスを代表する写真家、ピエール・セルネの「Synonyms(類似表現)」シリーズだ。

会場風景

 まず春画では、これまでの「春画展」でも主導的な役割を果たしてきた浦上蒼穹堂天守・浦上満の個人コレクションより、鳥文斎栄之、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿葛飾北斎といった日本を代表する浮世絵師5名の作品19件(前期、展示替えあり)が展覧。春画の中でも最高傑作のひとつとされる清長の《袖の巻》や、歌麿の《歌まくら》など、浦上が「もっともよい作家のもっともよい作品を集めた」という珠玉の春画が並ぶ。

展示風景より、手前は喜多川歌麿《願ひの糸口》(1799)
展示風景より、手前は葛飾北斎《喜能会之故真通》(1814)

 いっぽうのピエール・セルネ「Synonyms(類似表現)」シリーズは、文化的、民族的に異なる背景を持つ、個人あるいはカップルのヌードを被写体とした写真シリーズ。一見、写真とは思えないモノクロのシルエットによる抽象的な作品には被写体の名前のみがつけられており、そこから被写体の性別や国籍、文化的背景を推測するような構造になっている。

展示風景より、左から《Kaitlin》(2015)、《Jose & Luis》(2017)

 この2つの要素をつなぐのが会場デザインだ。毎回、話題を集めるシャネル・ネクサス・ホールの会場デザインだが、今回は壁のところどころに「覗き窓」を思わせるような丸窓が設けられている。設計したナノグラフィックスのおおうちおさむは、「(丸窓で)春画を見るという高揚感を出したかった。またその窓によって、来場者それぞれが見る景色を“編集”する面白さを感じてもらえたら」と話す。

 人間の官能的な姿を表現した絵師たちの「春画」とセルネの写真。この貴重なコラボレーションをぜひ堪能してほしい。

会場風景