「Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness」(埼玉県立近代美術館)開幕レポート。Nerhol(ネルホル)新章の幕開け【5/5ページ】

 展示の最後は、参加型のインスタレーション《種蒔きと烏》(2025)が飾る。床に置かれたのは1万枚もの白・黒2色の手漉き和紙によるポストカード。これらには1枚につき1粒のポピーの種が漉き込まれており、鑑賞者は好きなものを1枚持ち帰り、ポストカードごと土に埋めることも、手紙として誰かに送ることもできる。ポストカードを持ち帰る代わりに渡される同じ色の丸シールを壁面に貼ることで、鑑賞者の足跡がそこに残り、展示は外へと広がる。作家と来場者との新たな関係が紡がれる。

 連続イメージを積層し彫るという制作手法や様々な素材、対話という制作の起点などを改めて見つめなおし、新たなアプローチへと展開させたNerhol。昨年の美術館個展に続き、本展は彼らの新章幕開けとも言えるものとなった。

展示風景より、《種蒔きと烏》(2025)

編集部