そして第4章「ヨー・ファン・ゴッホ= ボンゲルが売却した絵画」では、ヨーがどのようにフィンセントを世に広めたかがわかる貴重な資料が展示される。
ヨーはテオと結婚する前、とくに美術に縁があったわけではないが、夫テオの死後も近現代美術に関する知識を身につけ、受け継いだ膨大な数の作品の売却を開始。売却の背景には親子が生計を立てるためだけでなく、フィンセント・ファン・ゴッホの評価を確立するという大きな目的があった。
そんなヨーの尽力を明らかにするのが、テオとヨーの会計簿である。最初はいわゆる「家計簿」のような使われ方をしており、日常生活にまつわる収支が記載されていたが、テオの死後は作品の売却についても記されるようになった。どの作品をいつ誰にいくらで売却したのか、といった生々しい記録が残され、のちのファン・ゴッホ研究に大いに役立った貴重な資料だ。会計簿を見ればいかにヨーが几帳面で、そしてフィンセントの作品を世の中に広めるために意志を持って動いていたのかが窺い知れる。

そして、本展は「ゴッホ展」であるにもかかわらず、一章丸ごとを使って、義理の妹であるヨーが主役に選ばれている点は改めて特筆すべきことだろう。いままで光が当たることはなかったが、間違いなくヨーがいなければフィンセントは今のように世の中に広まってないと考えれば、今回ヨーが取り上げられたという事実は、時代の潮目が変わってきたと考えてもいいだろう。



















