明治から大正にかけて日本では絵画的な写真表現を目指す「ピクトリアリズム」の動向が見受けられ、「芸術写真」が写真家らのあいだで広まるようになった。第3章「スティル・ライフ」では、このような影響のもと静物写真に取り組んだ髙山正隆らをはじめとする作品群を展示するとともに、静物写真からひとりの人間の存在やその身体性を浮かび上がらせる石内都による「mother's」シリーズもあわせて紹介されている。
1930年前後、各国で起こったモダニズムの動向が国内の写真表現にも影響し、写真ならではのフォーマットを用いながら様々な表現の実践を行う「新興写真」が誕生。そして、それはシュルレアリスムや抽象表現を取り入れた新たな表現スタイル「前衛写真」へと発展を遂げた。第4章「半静物? 超現実? オブジェ?」では、研究誌『新興写真研究』やそこに掲載された新興写真の作品群、野外で静物写真の撮影を行った安井仲治らによる前衛写真が並び、その一連の流れを見ることができる。
また、この潮流のなかで見受けられた「モノの造形性や構成を際立たせる意識」に共通点を持つ現代の写真家としてオノデラユキと今道子の作品シリーズもあわせて紹介されている。