「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」(滋賀県立美術館)開幕レポート。モノを撮る行為から生まれてきた表現とは【4/4ページ】

 第5章「モノ・グラフィズム」では、商業と密接に結びついた広告写真が取り上げられている。新興写真などと同時代的に注目されたこれらの写真は、アートディレクターやデザイナーらとの協業によって成立した。ここでは、名取洋之助らが設立した「日本工房」による対外宣伝紙『NIPPON』(1934)や、現在も愛され続ける河北秀也・浅井慎平の「いいちこ」ポスター(1984〜)などが展示されている。

展示風景より、日本工房『NIPPON』。名取洋之助、木村伊兵衛、原弘、伊奈信男、岡田桑三によるこのグラフ誌は、戦時中、日本の文化や優れた印刷技術を海外にアピールするために制作されたものでもある
展示風景より、河北秀也・浅井慎平の「いいちこ」ポスター

 最終章となる「かたちなるもの」では、「もののかたち」に注目した写真家らの作品をあらためて取り上げている。ここでは、「造形写真」という言葉のもと写真の抽象表現をつきつめた坂田稔や、版画や装丁で知られる恩地孝四郎、日本各地で見られる日用品や建築の一部分を撮影した岩宮武二、日本における抽象写真表現のパイオニアでもある山沢栄子、カラフルなスポンジを組みあわせその造型性にフォーカスした鈴木崇の作品が並んでいる。

展示風景より、坂田稔《球体について》(1939)
展示風景より、岩宮武二『かたち 日本の伝承』
展示風景より、鈴木崇「BAU」シリーズ(部分)

 なお、同館では展覧会ごとに誰もがいつでも参加することができる「ドロップインワークショップ」を実施している。今回は展覧会テーマにあわせ、実際にモチーフを組みあわせて「物撮り」を体験できるコーナーが設けられているため、ぜひ気軽に参加してみてほしい。

展示風景より
展示風景より

編集部

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