第5章「モノ・グラフィズム」では、商業と密接に結びついた広告写真が取り上げられている。新興写真などと同時代的に注目されたこれらの写真は、アートディレクターやデザイナーらとの協業によって成立した。ここでは、名取洋之助らが設立した「日本工房」による対外宣伝紙『NIPPON』(1934)や、現在も愛され続ける河北秀也・浅井慎平の「いいちこ」ポスター(1984〜)などが展示されている。
最終章となる「かたちなるもの」では、「もののかたち」に注目した写真家らの作品をあらためて取り上げている。ここでは、「造形写真」という言葉のもと写真の抽象表現をつきつめた坂田稔や、版画や装丁で知られる恩地孝四郎、日本各地で見られる日用品や建築の一部分を撮影した岩宮武二、日本における抽象写真表現のパイオニアでもある山沢栄子、カラフルなスポンジを組みあわせその造型性にフォーカスした鈴木崇の作品が並んでいる。
なお、同館では展覧会ごとに誰もがいつでも参加することができる「ドロップインワークショップ」を実施している。今回は展覧会テーマにあわせ、実際にモチーフを組みあわせて「物撮り」を体験できるコーナーが設けられているため、ぜひ気軽に参加してみてほしい。