展覧会の最初と最後に通ることとなる展示室外の長い廊下には、現実と幻想の境界を体験するインスタレーション《Liminal Pathway》が展開されている。ガラス窓は写真を印刷したフィルムですべて覆われ、光が拡散されて空間を満たす。入るときは蜷川ワールドへの序章となり、帰るときには展覧会から現実へと戻る際の余韻となる。展覧会と現実をつなぐ境界線のようだ。

巨大な展示室内の冒頭を飾るのは、《Breathing of Lives》だ。都市のなかで感じられる「いのちの息づかい」をテーマにした本作は、無数に配置された水槽に映像が投影され、揺らめく水面が生み出す幻想的な光景が広がる。本展では、これまで対象としてきた都市のモチーフに加え、京都特有の風景を映像に取り入れることで、美術館内外を接続させる。

鮮やかな赤一色で彩られた《Flowers of the Beyond》を構成するのは造花の彼岸花。彼岸花は古来より、生と死、此岸と彼岸の間を漂う象徴的な存在とされている。赤い花々の中を通り抜けることで、五感全体でその象徴性を体験することができるだろう。
