人の背丈程度の大きな6枚のガラスパネルで構成された《Silence Between Glimmers》には、花畑や蝶、藤の花、桜、海中の光景が展開。この写真と対を成す6枚のオーロラフィルターが、鑑賞者の動きや視点によって多様な光の表情を映し出し、空間全体を鮮やかに彩る。
これと隣接するのは、天井から吊るされた1500本におよぶクリスタルガーランドで構成された《Whispers of Light, Dreams of Color》だ。同作には10万個におよぶクリスタル、サンキャッチャー、蝶、星、ハート、⽬玉、イミテーションの宝石など様々なモチーフが散りばめられている。手仕事の記憶と多様性が集積した、宝箱のような空間だ。
《Dreams of the Beyond in the Abyss》は本展覧会のハイライトとなる大作。膨大な数の造花が咲き乱れる空間を抜けた先にあるのは、4面をLED ディスプレイに囲まれ、上下を鏡で挟まれた空間。映像には京都の八阪神社の桜や花火、蝶など様々なイメージがあふれ、その中に入ることで強い没入感を得ることができる。
「見た後で世界との接し方が少しでも変わる経験をしてもらいたい」と蜷川が語る本作は、鑑賞者を現実ともっとも遠い場所として位置付けられる「深淵の世界」へと連れて行ってくれる。
《Dreams of the Beyond in the Abyss》で強烈な体験をした後に待ち受ける映像作品《Embracing Lights》、そして《Liminal Pathway》は、鑑賞者をふたたび現実世界へと連れ戻してくれるだろう。