小西真奈「Wherever」に見る、画家のタッチの変遷

風景画の可能性を拡張し続けるアーティストの小西真奈。初期の代表作から最新作までを網羅する、自身初となる美術館での大規模な個展「Wherever」が府中市美術館で2月24日まで開催中だ。

文・撮影=中島良平

第1章「Gardens」展示風景より、左から《Crocodile》(2023)、《Flamingos》(2024)、《Water Lilies》(2024)。《Water Lilies》は出品作のうちの最新作

 雄大な自然を題材に、大画面の隅々まで描き込んだ理知的な絵画スタイルが評価され、2006年VOCA展で大賞を受賞した小西真奈。近年は即興的な筆運びで身近な題材を描くように、スタイルを固定することなく風景画の可能性を拡張し続ける。府中市美術館で開催中の小西真奈「Wherever」は、キャリア初期の代表作から最新作までおよそ100点の絵画作品が並ぶ作家にとって最大規模の個展だ(会期は2025年2月24日まで)。

第3章「Paintings 2004-2009」展示風景より、左から《キンカザン1》(2005)、《キンカザン2》(2005) この2作品を対象作品として、小西は2006年にVOCA賞を受賞した

 「小西さんから大型作品2点を寄贈したいとの申し出を受け、アトリエに調査に伺ったことがきっかけになりました」と、担当学芸員の神山亮子は開催までの経緯を話す。初期の緻密に描き込んだ作品から、即興的で余白を感じさせる作風へと変化したことが見て取れ、またその近作に魅力を感じたことから個展を依頼したという。

 そして、美術館で初となる大規模な個展を開催することを決めた小西。「この規模の空間で成立させられるか不安で、『作品が足りない!』となって目覚めるような悪夢をよく見ました」と、神山の依頼を受けた当初のことを笑いながら話す。

 「お話をいただいたのは2年前のことですが、神山さんには本当に伴走していただけたと感じています。徐々に描く楽しみが戻ってきて、会場に入ってからの設営も、空間に新たに絵を描くような感覚で楽しむことができました」。

小西真奈

編集部

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