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[ARTIST IN FOCUS]横山奈美:言葉の意味を探し求め、他者の肖像として絵画を描く

ネオン管を克明に描くシリーズを発表してきた横山奈美。「遠くの誰かを思い出す」と題されたケンジタキギャラリー 六本木での個展では、インドでの滞在を通して制作された新作絵画を発表。これまでの「ネオン」シリーズの変遷と、その背景にある考えについて話を聞いた。

取材・文=近藤健一(森美術館シニア・キュレーター)

東京都内にて 撮影=軍司拓実

言葉の意味を探し求め、他者の肖像として絵画を描く

 「LOVE」という4文字。直訳は「愛」であるが、恋愛だけでなく、人間愛、周囲への思いやり、性的なもの、キリスト教的な慈愛など、様々な「愛」を意味する。画家の横山奈美はこの4文字を「世界中の人々にもっとも知られている言葉」として、2018年から今日まで作品で継続的に扱っている。そして言葉を、時や状況、話者によって真意が変化する不安定なものととらえ、言葉の意味を絵画作品で探究する。「辞書をひらけば、意味を簡潔に表すことができるが、人々がそれぞれに求めているLOVEは辞書で統一された言葉なのだろうか。私の制作は、この問いから出発している」と述べる(*1)。

 「LOVE」シリーズをはじめとした彼女の近作は言葉や図像をネオンで立体化し、ネオン管そのものだけでなく、ネオンの背後にある配電線やフレーム、床や光の照り返しまでを写実的に描く絵画作品である。作家は言葉の構造とネオンサインの構造が似ていることを指摘する。言葉が表だとすると、その背後に意味があるのと同様に、私たちは光っているネオンをまず目にするが、よく見るとその背後には配電線やフレームが見えるからである。構造的に意味は言葉を支え、配電線やフレームがないとネオンサインは成立しない、とも換言できる。また、彼女は肉筆で書かれた単語を主題にするが、これは文字を書いた人の自画像であるという。

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