そして最後の第3章が、「Paintings 2004-2009」。時間を遡るかたちで小西真奈の画風の変遷をたどる展示により、小西の評価が確立されたキャリア初期の作品の数々を最後の展示室で見ることができる。
時期を遡る展示構成によって、より明確に伝わってくることがある。第1章に展示された作品から伝わってくるのは、即興的な筆運びによる画面の躍動感、光の移ろいも含めた軽快さだ。しかしそこから感じられるのは、どれだけ即興的に筆さばきを行ったとしても、決して崩れることのないたしかな空間把握と描写力だ。たしかな技量が、絵の自由な表現を如何様にも可能にしている。「1日たりと何も描かずに過ごす日は考えられない」というほどに、絵を描くことは小西にとって当たり前の行為なのだ。
印象派の画風を現代にアップデートしたかのような、第1章「Gardens」に集められた鑑賞者の心を躍らせるような作品の数々。コロナ禍でのひとつの楽しみ(気晴らし?)として、ステイホーム期の作品を集めた第2章「Drawings」の鉛筆によるドローイングと、過去の取材写真をもとに夢想して描いた遠くの景色。キャリアの原点に位置し、最初に画風を確立させた時期の確固たる作家性に裏打ちされた第3章「Painting 2004-2009」の大型作品群。展示を追うことで、絵の楽しさと絵がもつ力を体感することができるはずだ。