北京の現代美術館「UCCA現代アートセンター」で、ベルギー人アーティスト、リュック・タイマンスの回顧展「The Past」が開催されている。会期は2025年2月16日まで。
本展は、UCCAの客員キュレーターであるピーター・イリーがタイマンス本人と密接に協力して企画したもので、タイマンスにとって中国における初めての本格的な個展だ。1975年から2023年までに制作された87点の作品を展示し、その絵画表現の独自性と歴史への繊細でときに不気味なアプローチを深く探求するものになっている。
タイマンスは、絵画の分野で独自の地位を築いてきたアーティストであり、その作品は中国とも深い関係を持つ。UCCA館長のフィリップ・ティナリは、次のように述べている。「タイマンスは中国にとっても非常に重要なアーティストだと思う。とくに2000年代以降、多くの中国の画家が過去の象徴的または直線的なコンセプチュアルアプローチから離れ、新たな絵画表現を模索するなかで、タイマンスの作品が重要な参考となった」。
タイマンスの作品は、日常的な物体から大きな歴史的出来事に至るまで、様々な主題を取り扱う。その特徴的な「写真のような」色褪せたスタイルは、観客を引き込む魅力的な表面をもちながら、その背後にはつねにストーリーや選択、編集のプロセスが存在している点も特徴だ。
また、タイマンス自身も中国への強い関心を持ち続けてきた。2007年には北京の故宮博物院で開催された展覧会「The Forbidden Empire」をキュレーションし、09年にはベルギーと中国のアーティストによる展覧会「The State of Things」を企画している。本展は2008年に構想が始まったが、約16年の年月を経てようやく開催が実現できた。その意味で本展は、中国の伝統と現代、東洋と西洋の文化的な対話など、タイマンスの関心の集大成とも言える。
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