中国で「陶器の都」と称される江蘇省宜興市。ここに隈研吾が設計した「UCCA陶美術館」(UCCA Clay)が今年10月に開館した。
同館は、北京を拠点とする中国を代表する現代美術館「UCCA現代アートセンター」が運営する4つ目の美術館であり、UCCA Dune(北戴河)、UCCA Edge(上海)に続く新たな拠点となる。その名が示す通り、陶芸や陶器に特化した美術館だ。
宜興市は何世紀にもわたり陶芸の伝統を育み、とりわけ紫砂茶器の生産地として中国国内外で広く知られている。同地に建つUCCA陶美術館は、手焼きのテラコッタタイルで覆われた建築が象徴的であり、これは宜興の紫砂土へのオマージュとしてデザインされたものでもある。
その建築デザインは、北宋時代の文豪・蘇東坡が愛した蜀山や、600年以上の歴史を持つ現役の龍窯の形状に着想を得ている。2400平方メートルの施設は山のようなヴォリュームを持ち、ファサードに使用された陶板は地元の職人と共同で開発したもので、凹凸や釉薬によるグラデーションが時間や季節によって様々な表情を見せる。
館内では、1階には広々としたメインな展示ホールが配置されており、2階の展示スペースは高い天井を持ち、建築の象徴的な山脊のような屋根の構造を間近で感じられる設計となっている。美術館の床タイルや案内サインなどもすべて地元で製造された陶板を使用しており、空間全体に地域の工芸文化が息づいている。
開館記念展「土の道」(~2025年2月23日)は、岐阜県現代陶芸美術館の所蔵品から、「国際陶磁器フェスティバル美濃」の受賞作品69点を展示。「自然の形態を有機的に表現」「空間と表面の幾何学的変化」「歴史的アイコノグラフィーと精神性の反映」という3つのテーマを軸に、17ヶ国65名のアーティストによる作品を通じて現代陶芸の多様性と可能性を示すものだ。
UCCAの館長フィリップ・ティナリは、「この展覧会は、美濃と宜興、日本と中国の陶芸文化を結びつけるだけでなく、陶芸というメディアを現代的に再解釈する国際的な試みだ」と語る。また、現代的な要素を取り入れつつ、陶芸を通じて宜興という土地とのつながりを生み出すことを目指しているという。
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