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「ペインティングス・アー・ポップスターズ」(国立新美術館)開幕レポート。荒川ナッシュ医による国内初の美術館個展【3/3ページ】

 12月にアジア系アメリカ人の双子を授かる荒川ナッシュは、アメリカの地で移民第一世代となる。「絵画とパスポート」のフィールドでは、日本国外で制作活動を行ってきた日本にルーツを持つアーティストらの作品を取り上げている。河原温による「日付絵画」シリーズのオマージュ作品や同シリーズを始める前のドローイングからは、河原の子供にまつわるエピソードも読み取れるようだ。

「絵画とパスポート」展示風景より、荒川ナッシュ医《無題(河原温《APR.13.1978》1978年)》。河原温による「日付絵画」シリーズのこの日付は、自身の子供が誕生した次の日ではないかと荒川ナッシュは推測する
「絵画とパスポート」展示風景より、河原温による新生児にまつわるドローイング

 ほかにも「絵画と即興」では、作品保全の役割を持つ学芸員が絵画が好きなあまり様々な作品に触れてしまうといったファンタジックな映像作品が目を引くほか、「絵画とバレエ」のフィールドには、美術館内に横断歩道のような公共性を帯びたスペースが出現。ロバート・ラウシェンバーグをテーマにした哲学者・千葉雅也、声優・村瀬歩との協働インスタレーションも印象深い作品であった。

「絵画と即興」展示風景より、斎藤玲児 with 荒川ナッシュ医&亀田晃輔《モデル(大塚国際美術館、徳島、日本)》(2024)
「絵画とバレエ」展示風景より、千葉雅也 with 荒川ナッシュ医《サマー・レンタル(ロバート・ラウシェンバーグ《サマー・レンタル》、《サマー・レンタル+1》、《サマー・レンタル+2》、《サマー・レンタル+3》1960年)》

 このように、会場では荒川ナッシュの視点から数多くのフィールドが用意されている。しかし、足を運ぶたびに現場の様相が変わっていたり、その日参加者らによって新たなパフォーマンスが起こりうるという点が通常の国立美術館では滅多に味わうことができない鑑賞体験であると言えるだろう。

 なお、会期中のパフォーマンススケジュールは公式ウェブサイトや会場パネル、配布されているハンドアウトで確認することが可能だ。ぜひ実施されているタイミングを目掛けて足を運ぶことをおすすめしたい。

展示風景より

編集部

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