ふたつめの章は「水と月、四季のうつろい—絵画と書跡」と題して、月や雨の姿を絵画や詩歌で表した作品が並ぶ。
上村松園《雪月花》(1937、昭和12年)は春の桜、秋の月、冬の雪を愛でる平安の宮中を雅に描いたもの。また、国宝の伊藤若冲《動植綵絵 梅香皓月図》(18世紀、江戸時代)は若冲が10年以上をかけて制作した《動植綵絵》の一幅で、満月に照らされる早春の梅花を緻密に描いたものだ。
また、雨上がりの虹を、雨具をつけた漁師と対比しつつ描いた川合玉堂《雨後》(1924、大正13年)や、秋の終わりを感じさせる枯れた茄子とともに、じゃれる夕暮れ時の狐を表した西村五雲の代表作《秋茄子》(1932、昭和7年)など、巧みな瞬間の表現を堪能できる作品も並ぶ。
書にも注目したい。近衛家煕《近江八景和歌》(17〜18世紀、江戸時代)は近江八景について詠まれた和歌を色とりどりの料紙に四季や花鳥風月を表現しながら書写したもの。また、伝源俊頼《安宅切本和漢朗詠集》(12世紀、平安時代)も料紙の美しさが際立っている。
古くから愛されてきた雨雪や月といったモチーフを、多彩な技法で表現した名品がそろった展覧会だ。
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