長野・小布施にある北斎館に、水戸岡鋭治(デザイン)と砂田光紀(空間設計)によるキッズルーム「水戸久斎(みとくさい)」がグランドオープンした。
水戸岡は1947年生まれ。インダストリアルデザイナー・イラストレーターとして活躍しており、その代表作にはJR九州の寝台列車「ななつ星 in 九州」の車両や駅舎のデザインなどが挙げられる。小布施においてもレストランや診療所のデザインを手がけるなど、深い関わりがあるという。
いっぽうの砂田は1963年生まれ。学芸員、ミュージアムプロデューサーとして、東京おもちゃ美術館をはじめとする各地の博物館、美術館の計画・設計・製作に携わっている。
元々ラウンジであった場所を改装して生まれたこのキッズルームには、「冨嶽三十六景」や『北斎漫画』、小布施の岩松院にある《八方睨み鳳凰図》など、北斎作品にちなんだ遊具・おもちゃが設置されているのがポイント。また、空間内の北斎作品はイラストレーターでもある水戸岡によって描かれており、目で見ても楽しい着彩が施されている。空間がすべて天然の木材でつくられているのも、砂田のこだわりだ。
水戸岡は完成したキッズルームを前に次のようにコメントした。「子供たちに楽しい時間と空間を提供したいと考え、製作に当たった。以前から北斎作品を模写することがあったが、その表現力には毎度驚かされるばかり。自身が感じた北斎のすごさを、子供たちにもこの空間を通じて伝えられたらと思う」。
また、砂田は「子供たちのための施設を全国でも数多く手がけてきたが、できるだけ天然の木材に触れる機会をつくることを心がけてきた」としつつ、「シンボルとなる『桶』や《神奈川沖浪裏》がモチーフの滑り台など、様々な場所から北斎を発見できる場となっている。子供が『帰りたくない!』と泣いてしまうような空間を目指した」と製作における工夫についても教えてくれた。
このスペースは、赤ちゃんから未就学児、小学校低学年までが主な対象であり、子供1人あたり300円で利用することが可能だ。現時点では保護者の同伴が必要だが、今後イベントなどに合わせて保育士の採用を行うなどの運用も検討されるという。
なお、同館では新千円札の図案に《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》が採用されたことを記念した「新紙幣発行記念 北斎進化論」が企画展示室にて8月18日まで開催中。ほかにも、2026年の開館50周年に先立ち、アートギャラリーとカフェが融合した新店舗「ガラリ」も敷地内にオープンされている。この機会に、誰しもが知っている葛飾北斎の画業について、あらためてたどり直してみるのもよいだろう。