時計市場で存在感を強めるフィリップス
フィリップスもまた、春シーズンのオークション売上高5億700万ドル(約824億円、前年比60パーセント増)を発表。落札率は90パーセント、イブニングセールでは94パーセント、金額ベースでは99パーセントという高水準を維持した。230周年を迎える節目の年にあたり、新規顧客は全体の40パーセントを占め、入札者・購入者の約3分の1がミレニアル世代とZ世代だったことも特徴だ。

モダン&コンテンポラリーアートではアンディ・ウォーホル《Sixteen Jackies》が1622万5000ドル(約26億円)でシーズン最高額となったほか、時計部門ではジュネーブ、ニューヨーク、香港の3都市すべてで過去最高売上を更新。ジュネーブ開催の時計オークションは世界史上最高額の時計オークションとなり、同社が時計市場での優位性をさらに強めた。
また、駐デンマーク米国大使ジョン・L・ローブ・ジュニア旧蔵コレクションや、ティナ・ヒルズ・コレクションなど複数のプライベートコレクションが高い落札率を記録。香港市場では前年比50パーセント増とアジアでの成長も目立ち、日本を含むアジア各国からの買い手が増加したという。
数字が示す市場回復と、その内実
今回の3社の業績を見ると、市場回復の背景にはいくつかの共通点が浮かび上がる。まず、質の高いシングルオーナーコレクションへの需要が依然として極めて強いこと。クリスティーズのS.I.ニューハウス・コレクション、サザビーズのザ・ルイス・コレクション、フィリップスのジョン・L・ローブ・ジュニア旧蔵コレクションはいずれも市場を牽引する存在となった。また、公開オークションだけではなく、非公開取引(プライベートセール)が各社の重要な収益源として定着しつつあることが改めて示された。さらに、時計やジュエリー、自動車などラグジュアリー分野の堅調な需要が、美術市場全体の売上を押し上げている点も見逃せない。

いっぽうで今回の好業績は、希少性や来歴に優れた「トップクラスの作品」に需要が集中していることによる側面が大きく、中価格帯では依然として慎重な選別が続いている。また、各社ともオンラインセールや若年層コレクターの発掘、金融サービスやプライベートセールの拡充を進めており、従来型のオークションビジネスだけではない多角化戦略を加速させている。
2026年上半期は、主要3社がそろって大幅な増収を達成したことで、美術市場がコロナ後の調整局面を経て新たな成長フェーズへ入りつつあることを印象づけた。今後は秋のニューヨーク、ロンドン、香港の大型セールに加え、どれだけ質の高いコレクションを確保できるかが、各社の競争力を左右する最大の焦点と言えるだろう。
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