杉本博司による修羅能『巣鴨塚 ハルの便り』が終戦記念日に再演。戦争を「物語」として語り継ぐ新作能

現代美術作家・杉本博司による新作能「杉本修羅能『巣鴨塚 ハルの便り』」が、8月15日に東京・喜多能楽堂で上演される。東京裁判でA級戦犯として処刑された板垣征四郎の漢詩をもとに杉本が執筆した作品で、2025年の初演(8月)、再演(12月)に続く再々演となる。

撮影:前島吉裕

 現代美術作家・杉本博司による新作能「杉本修羅能『巣鴨塚 ハルの便り』」が、8月15日に東京・喜多能楽堂で上演される。終戦80年にあわせて2025年8月15日に初演され、大きな反響を呼んだ作品の再々演となる。

 本作は、東京裁判でA級戦犯となった陸軍大将・板垣征四郎が巣鴨拘置所で刑死を前に残した漢詩をもとに、杉本が修羅能として書き上げた作品。『新潮』2013年1月号に発表された能台本を出発点とし、朗読、朗読能、映像作品などを経て、本格的な能作品として結実した「巣鴨塚プロジェクト」の集大成として位置づけられている。

板垣征四郎の漢詩 Ⓒ小田原文化財団

 杉本は本作について、「先の大戦」はいまや「物語」として語られる時代を迎えつつあると指摘する。平家物語が琵琶法師の語りを通じて能や浄瑠璃、歌舞伎へと継承されていった歴史を引きながら、「この話は『能』にしておかなければならない」という使命感を抱いたという。また、戦争を右・左という思想的対立を超えて見つめ直すためにも、修羅能として演じ続ける必要があると語っている。

 劇中では、戦争を中世の物語へと翻案するため、ダグラス・マッカーサーを「松嵩の中将」、東條英機を「東条の大臣」、石原莞爾を「石原の少将」、板垣征四郎を「板垣征四郎常信」として描く。また、副題の「ハルの便り」は、日米開戦の契機となった「ハル・ノート」を暗示している。

能面「十寸髪男」(室町時代) 杉本博司所蔵

 演出は大島輝久、狂言演出には野村萬斎が参加。前シテ(老人)を大島輝久、後シテ(板垣征四郎常信の霊)も同氏が勤めるほか、ワキに御厨誠吾、アイに野村太一郎らが出演する。