ヴェネチア・ビエンナーレで参加作家ら70人超が「ビジターズ・ライオン賞」を拒否

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「In Minor Keys」をめぐり、メイン展示参加アーティストや国家館関係者70人以上が、新設された「ビジターズ・ライオン賞」の選考対象から辞退する声明を発表した。

プレビュー期間中の5月8日、第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「In Minor Keys」の参加アーティストのひとりである嶋田美子がアメリカ館の前で行った抗議パフォーマンスの様子 撮影=編集部

 5月9日に開幕した第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「In Minor Keys」をめぐり、メイン展示参加アーティストや各国パビリオン関係者70名以上が、新設された「ビジターズ・ライオン賞」の選考対象から辞退する声明を発表した。

国際審査員団の総辞任を発端に

 今回の動きは、4月末に発生した国際審査員団の総辞任を受けたものだ。審査員団は4月23日に発表した声明のなかで、「国際刑事裁判所(ICC)によって人道に対する罪で訴追されている国家の代表には賞を授与しない」と表明。イスラエルおよびロシアを念頭に置いた方針と受け止められ、大きな議論を呼んだ。

 審査員たちは声明で、「ヴェネチア・ビエンナーレが、芸術を同時代の切迫した問題と結びつけてきた歴史的役割に対して責任を負っている」と説明。「芸術実践と国家代表制との複雑な関係、とりわけ作家の作品が国家の行為と結びつけられる構造を認識している」としたうえで、「人権擁護と、コヨ・クオのキュラトリアル・プロジェクトの精神を守るため、人道に対する罪で訴追された国家の代表は審査対象としない」と述べていた。

 しかし、この方針に対しイスラエル外務省は、「イスラエル代表作家ベル・シモン・ファイナルをボイコットするものだ」とX上で反発。政治的圧力や法的問題に発展する可能性も指摘されるなか、ビエンナーレ側は4月30日に審査員団の辞任を正式受理した

 これを受けてビエンナーレ財団は、通常の金獅子賞に代わる措置として、来場者投票による「ビジターズ・ライオン賞」を新設。「In Minor Keys」参加作家を対象とする賞と、国家館を対象とする賞の2部門を設けた。投票は、ジャルディーニとアルセナーレ両会場を訪れた来場者が対象となり、会期終了後の11月22日に結果が発表される予定だ。

 ビエンナーレ側は声明で、「すべての国家参加は、開放性、対話、検閲の拒否というビエンナーレ創設以来の理念に基づき、平等に扱われる」と説明。「ビエンナーレは、芸術、文化、表現の自由の名のもとに停戦の場であり続けなければならない」と強調した。