ヴェネチア・ビエンナーレで参加作家ら70人超が「ビジターズ・ライオン賞」を拒否【2/2ページ】

アーティストたちの抗議声明

 しかし、こうした対応に対し、メイン展示「In Minor Keys」の参加アーティストらが5月9日、e-fluxで抗議声明を発表。「私たちは、コヨ・クオによって選出された作家として、彼女が選んだ審査員団の辞任に連帯し、『ビジターズ・ライオン賞』の対象から辞退する」と述べた。

 署名者には、ワリド・ラード、アリス・メイハー、ローリー・アンダーソン、アルフレド・ジャー、ソラブ・フラら国際的なアーティストに加え、日本から嶋田美子、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、アレクサ・クミコ・ハタナカらも名を連ねる。また、国家館側からも、アイルランドのイヴォ・バラダ、オランダ館のドリース・フェルフーフェン、リトアニア館キュレーターのエグレ・ブドヴィティテらが参加している。

 インド出身の写真家ソラブ・フラは「The Art Newspaper」に対し、「良心ある人なら誰でも審査員と同じ行動を取っただろう。賞を期待するより、彼らを支持したい」とコメント。いっぽうでビエンナーレ側は、「署名した作家であっても、受賞した場合は賞を受け取らないだけであり、投票対象から外れるわけではない」と説明している。

 今回のビエンナーレでは、イスラエル館をめぐる抗議も続いている。プレビュー期間中には、複数の国のパビリオンが一時閉鎖されるストライキ行動が実施されたほか、イスラエル館前では抗議デモも行われた。また、ロシア館ではプレビュー期間中のみ一般公開され、ライブパフォーマンスを実施。会期中は、記録映像のみが館の窓に設置されたスクリーンで上映されている。EU(欧州連合)は、ロシア館の参加を理由のひとつとして、今回のビエンナーレに対する関連助成の撤回を決定したことも波紋を呼んでいる。

 故コヨ・クオの理念を継承するかたちで進行している今回のヴェネチア・ビエンナーレ。開幕直後から、国家代表制と芸術の自由、倫理と制度運営の関係をめぐる議論が、これまで以上に前景化している。