第61回ヴェネチア・ビエンナーレ、審査員団が開幕直前に辞任

5月9日に開幕する第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展を前に、国際審査員団が辞任するという異例の事態が発生した。

ヴェネチア・ビエンナーレ、中央パビリオン・ジャルディーニの外観 Photo by Francesco Galli

 5月9日に開幕する第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「In Minor Keys」をめぐり、国際審査員団が開幕直前に辞任するという異例の事態となった。

 辞任したのは、ソランジュ・オリベイラ・ファルカス(委員長)をはじめとする5名の審査員。彼らはe-fluxに発表した声明において、「2026年4月30日付で辞任する」とし、その理由を、4月23日に公表した「意図声明」に基づく判断であると説明した。

 問題の発端となったのは、4月下旬に発表された審査方針である。審査員団はこの声明のなかで次のように述べている。「ビエンナーレが芸術と同時代の緊急性を結びつける場であるという歴史的役割に対し、私たちは責任を負っている。芸術実践と国家代表性の複雑な関係を認識したうえで、人権の擁護とコヨ・クオのキュラトリアル・プロジェクトの精神にコミットするため、国際刑事裁判所によって人道に対する罪で訴追されている国家の代表は審査対象としない」。

 この方針は具体的な国名を挙げていないものの、ロシアおよびイスラエルを念頭に置いたものと広く受け止められた。この決定は即座に波紋を呼び、イスラエル外務省は4月26日、SNS上で審査員団の判断を「ボイコット」と批判し、同国代表として出品予定の彫刻家ベル=シミオン・ファイナルに対する不当な扱いであると反発した。

 ビエンナーレ側は4月30日、国際審査員団の辞任を正式に受理したと発表。これに伴い、当初開幕日に予定されていた授賞式は11月22日へと延期されることとなった。さらに今回は例外的措置として、審査員による選考に代わり、来場者による投票で決定される「ビジターズ・ライオン」賞が新設される。

 投票はジャルディーニとアルセナーレの両会場を訪れたチケット保有者に限られ、会期中に各賞へ1回ずつ投票できる仕組みとなる。受賞対象は「国際展参加作家」と「国別参加」の2部門で、いずれもロシアやイスラエルを含む公式参加者すべてが対象とされる。

 ビエンナーレ側はこの措置ついて、「開放性、対話、検閲の拒否という創設理念に基づくもの」であり、「芸術と文化の名のもとに停戦の場であり続けるべき」と説明している。