evalaが「アルス・エレクトロニカ賞2025」で、「冨田勲特別賞」を受賞。日本人では初【2/2ページ】

 受賞作《ebb tide》は、ICC最大の展示室を使用したサウンド・インスタレーション作品で、波打つような構造体の中に身を預けながら音に没入する体験を提供する。evalaが主宰するプロジェクト「See by Your Ears」の原点となる《大きな耳をもったキツネ》(2013–14)から着想を得ており、音楽の時間的な進行や視覚的要素を極力排し、聴覚そのものの可能性を探る試みとなっている。

 審査員は、「『聴く』という行為がいかに変容的な体験になり得るかを示す作品」と評価し、「視覚中心の現代において、evalaは聴覚の新たな価値を提示している」とコメント。また、鑑賞者のイマジネーションを喚起する構造が「サウンド・アートを多くの人々に開かれたものとした点」において特筆され、これは冨田勲の理念とも一致すると述べた。

evala ebb tide
Photo by MARUO Ryuichi. Courtesy of NTT InterCommunication Center [ICC]

 evalaは、既存の音楽形式にとらわれず、独自の「空間的作曲」や「耳で視る(See by Your Ears)」というコンセプトのもと、無響室や庭園、廃墟、劇場、公共空間など、様々な環境で革新的なサウンド・インスタレーションを展開。国内外で高い評価を得ている。

 なお、アーティスト・藤堂高行が今年2月に発表した作品《鎖に繋がれた犬のダイナミクス》が「アルス・エレクトロニカ賞2025」において佳作を受賞。また、evalaの受賞を記念して、ICCの無響室ではその代表作《大きな耳をもったキツネ》(2013–14)および《Our Muse》(2017)が、8月8日から9月15日まで再展示される予定だ。

編集部