ゲームや遊びを軸に、これまでにない分野横断型アーティスト・クリエイターの発掘・育成・グローバルチャレンジなどを支援する複合プロジェクト「ars●bit(アーソビット)」。その第1弾となるシンポジウム「アート×ゲームの新時代──〈遊び〉と〈芸術〉の根源をめぐって」が渋谷の404 Not Foundで3月16日に開催される。
「ars●bit」は、2021年よりホテル アンテルーム 京都で毎年開催されている現代アート×インディーゲームの企画展シリーズ「art bit」と、24年7月に東京・渋谷のShibuya Sakura Stageにオープンした新たなインディーゲームの聖地「404 Not Found」との協働によって実施されるもの。文化庁による「クリエイター・アーティスト等育成事業(文化芸術活動基盤強化基金)」への採択を経て、本格始動する運びとなった。

国境や文化、社会体制の垣根と分断を越えて、いまや世界中の人々の共通体験となっているデジタルゲーム。これらは、既存の芸術表現や最先端の情報テクノロジーの動向と結びつきながら、人類の〈遊び〉の根源にアプローチすることで、たんなる商業エンターテインメントの枠には納まらない、新たなアート・メディウムとしても開花しようとしている。
とりわけ近年の日本では、2018〜19年にNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]で行われた「イン・ア・ゲームスケープ ヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」を嚆矢に、21年からホテル アンテルーム 京都にて「art bit - Contemporary Art & Indie Game Culture -」が日本最大のインディーゲームの祭典「BitSummit」のスピンオフ展として毎年夏に行われているほか、25年2月13日からは森美術館にて企画展「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」が開幕。現代アートやメディアアートとデジタルゲームとの境界領域を独自の切り口で追求する企画展が、いま相次いで開催され注目を集めている。
同プロジェクトのキックオフイベントとして実施される今回のシンポジウム「アート×ゲームの新時代」では、そんなジャンル横断の旗手たちによる7つのセッションが実現。ゲームエンジンを駆使したアート作品制作や「イン・ア・ゲームスケープ」「マシン・ラブ」展のキュレーションを担当したメディアアーティスト・谷口暁彦、ピクセルアート表現を武器に東洋思想や仏教美術に立脚したデジタルアートと『摩尼遊戯TOKOYO』『悟遊戯 OHENRO 88』などのインディーゲーム制作を一貫して手がけるアーティスト・たかくらかずき、ヨーゼフ・ボイスやナムジュン・パイクといった世界の現代アートの巨匠たちをいち早く紹介し、日本の現代アートシーンを牽引してきたワタリウム美術館の和多利恵津子・和多利浩一といったキーパーソンたちがパネリストとして登壇する予定となっている。
多彩なかたちで結びついていくアートとゲームの分野横断からは、どのような風景が立ち上がるのか。第一線のプレイヤーたちが集結し、次世代のアーティスト/クリエイターに向けて知恵を寄せあい、学びあうための1日となるだろう。