世界でもっとも巨大なギャラリーのひとつである「ペース」。今年11月に東京都心に開業する麻布台ヒルズに、2024年春に日本初となるギャラリースペースをオープンすることが発表された。
ペースはニューヨークやロンドン、ジュネーブ、香港、ソウルなど、世界中に8つの拠点を持ち、2019年にはニューヨーク・チェルシーに美術館規模の8階建てのグローバル本社をオープンし話題を呼んだ。1960年にアーニー・グリムシャーによって創立されて以来、アレクサンダー・カルダーやウィレム・デ・クーニング、デイヴィッド・ホックニー、ジェフ・クーンズ、ソル・ルウィット、マーク・ロスコ、ロバート・ラウシェンバーグなど、世界でもっとも影響力のある現代アーティストを数多く紹介しており、日本で活動するアーティストのなかでは、李禹煥、奈良美智、名和晃平、チームラボなども取り扱っている。
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新しい東京スペースは、イギリスの建築家でデザイナーのトーマス・ヘザウィックがデザインを手がけた麻布台ヒルズの低層エリアにオープンする予定。建物の3フロアにわたり、総面積510平米を超えるスペースを有するこのスペースは、東京のギャラリーのなかでも最大級のものとなる。
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内装を手がけるのは、直島のシンボルのひとつである「直島パヴィリオン」や2013年、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンをデザインした建築家・藤本壮介。緩やかな丘陵をイメージにした建築の1階と2階には、総面積280平米におよぶ展示スペースが広がり、3階はプライベートテラスならびに、斜面と一体的にデザインされた屋外彫刻の展示にふさわしい空間となっている。
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2008年に北京にギャラリースペースを開設し(同スペースは19年にクローズ)、グローバルギャラリーのなかでもいち早くアジアに進出したペース。東京に注目し始めたのは、創業者のアーニー・グリムシャーが日本のアーティスト、キュレーター、コレクターとの交流を求 め、しばしば来日するようになった1960年代後半のことだという。
東京について、ペース現在のCEOであるマーク・グリムシャーは声明文で次のように述べている。「東京は過去から現在にいたるまで、国際的なアート・シーンの鍵を握る都市であり続けている。この数年はとくに、アジアのアートをとりまく環境のなかで、東京が重要性を増していることが明らかになってきた。世界の主要な首都のひとつである東京は、新旧の文化を背景に、活気あふれる現代アートシーンの舞台となっており、その東京に新たにギャラリーを常設できるのは喜ばしいかぎりだ」。
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東京スペースとオープニング展の詳細は後日発表される予定だが、このスペースに対してグリムシャーは次のような期待を寄せている。「東京に進出すればギャラリーの日本人アーティストとより多くの時間を共有することができ、これまでも長く、実り多い関係を保ってきた日本のギャラリーのみなさんとの協力関係をさらに密にすることもできるだろう。今後、東京がアート・コレクションの盛んな都市として、世界でも屈指の地位を回復するのは確実でペースはその発展の一翼を担えるよう願ってやまない」。