今年9月にニューヨーク・チェルシーに美術館レベルの旗艦店をオープンすることで、注目を集めるメガギャラリー「ペース」。そのペースが、新しい旗艦店のこけら落とし展覧会の企画を発表した。
「Bonetti/Kozerski」建築事務所が設計を手がけたこの8階建ての建物は、約7000平米の面積を持ち、屋内と屋外を含む5階にわたる展示スペースは、現在ペースのニューヨークの展示スペースの2倍以上。9月14日のオープン時には、各階で5つの展覧会が同時にスタートする。
1階では、「動く彫刻」で知られているアメリカの彫刻家、アレクサンダー・カルダー(1898〜1976)の個展が開催。カルダー財団の協力を得たこの展覧会では、カルダーが1920年代半ばに制作した初期作品から、31年に発明した「モビール」という動く彫刻まで、そしてスケッチや抽象画、電動オブジェクト、吊り下げ式のモビールなど、カルダーの幅広い芸術的な実践を示す作品を展示する。
3階では、デイヴィッド・ホックニーによる新作、24パネルにおよぶパノラマ絵画と4つのドローイングを発表。ノルマンディーの春を描いたこれらの作品は、中国の伝統的な絵巻物や現代のタイム・ベースドアート、中世の刺繍画「バイユーのタペストリー」などの影響を受け、ホックニーの空間の表現による実験を紹介する。
そのほか、2階と7階のスペースでは、抽象画家のロイ・ホロウェルによる新作、フレッド・ウィルソンによるシャンデリアの彫刻を個展形式で紹介。マンハッタンのスカイラインを一望し、大規模な彫刻のインスタレーションを展示できる屋外展示スペースを持つ6階では、カルダー、ジョエル・シャピロ、トニー・スミスによる屋外彫刻を展示する。
ペースの社長兼CEOであるマーク・グリムシャーは、この新社屋について次のようにコメントしている。「ペースの新しい本社では、アーティストが自らのストーリーをきちんと伝え、それをダイナミックに体験できる場を提供します」。
またペース設立60週年を迎える2020年には、リンダ・ベングリスやアーリーン・シェチェットなどのニューヨークでの初個展、そしてジャン・デュビュッフェ、イサム・ノグチ、ロバート・ライマンなど、20世紀の現代美術に大きな影響を与えたアーティストたちの展覧会も開催予定となっている。