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感情、不完全さ、調節。トーマス・ヘザウィックが語る「人間味のある建物」

6月4日まで六本木ヒルズ森タワーの東京シティビューで森美術館が企画した「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が開催されている。これまでの活動において「人間味」や「感情的な機能」を重要視してきた同スタジオの創設者、トーマス・ヘザウィックに彼が考える「人間味のある建物」について話を聞いた。

文・写真=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

トーマス・ヘザウィック

 古代ローマの建築家マルクス・ウィトルウィウス・ポッリオは、その著書『建築について』(紀元前30年〜紀元前23年頃)で、優れた建築が「強さ」「実用性」「美しさ」という3つの条件によって成り立つことを提唱している。イギリスの建築家/デザイナー、トーマス・ヘザウィックは、「しかし、この80年のあいだに建てられた建物の99パーセントは、喜び(=美しさ)の部分が捨てられてしまった」と嘆いている。

 今年3月より六本木ヒルズ森タワーの東京シティビューで行われている「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」の開幕に際し、ヘザウィックはグループインタビューでその理由についてこう述べている。「なぜなら、耐久性や実用性を追求すれば、美しさや喜びは後からついてくるという思い込みがあったから。しかし、これは間違っている」。

 ヘザウィックによれば、かつての建物の設計者は素材や工芸技術にまつわる感情を持っている「マスタービルダー」だった。しかし20世紀以降、建築業界では「形態は機能に従う」「少ないほうが豊かである」「装飾は犯罪である」など、建築設計を過度に知的化することにより、建築の価値が失われてしまっているという。「だから、直感をもっと信頼し、直感ともっと関わることができるよう、他の人に影響を与えることができればと思う」。

「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」の展示風景より、《上海万博英国館》(2010)の模型展示

 東京シティビューでの展覧会のレポート記事でも紹介したように、ヘザウィックとそのチームは「魂や人間らしさを重視する」ようなプロジェクトで知られている。本展の最後に展示されている、ヘザウィックが昨年TEDで行ったプレゼンテーションの映像で彼はそうしたデザインの重要性を語りつつ、次のような言葉を残している。

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