今年9月、ニューヨーク・チェルシーに約7000平米におよぶ美術館レベルの旗艦店をオープンするメガギャラリー「ペース」が、北京の798芸術区にある支店をクローズした。
ペースの創設者であるアーネ・グリムシャーは、今回の閉廊について「ARTNEWS」にこう語っている。「しばらく前から検討を重ねた結果、中国本土で事業を行うことは不可能と判断しました」。
今後、香港でのふたつの支店を拠点に展示や運営を続けるいっぽう、北京ではオフィスとビューイングルームのみが残るかたちだ。「習(近平)が権力を握って以来、中国人は自分の富が目立って公になることを恐れており、中国本土で(作品を)購入しないのです」。そうした富裕層が作品を購入するときには、「本土以外にある自邸のために世界中のギャラリーを訪れますし、どのみちそうした人々は香港に来ますから」。
また、政治的な原因のほか、中国本土でアート作品を購入する際に生じる38パーセントの贅沢税も今回の閉廊に至る大きな要因のひとつになったという。
中国大陸に進出した最初のメガギャラリーでもあるペースは、2008年北京オリンピックが開催された節目の年に、798芸術区にあるバウハウス様式の元工場を改造して中国初のスペースをオープン。その後、ガゴシアンやペロタン、ハウザー&ワースなどのメガギャラリーが相次いで中国大陸や香港に出店をしている。
また、ペースでは張曉剛(ジャン・シャオガン)や岳敏君(ユエ・ ミンジュン)、張洹(ジャン・ホァン)など中国人の現代作家を取り扱っているほか、名和晃平、奈良美智、李禹煥などのアジアを代表するアーティストも世界中に紹介している。
メガギャラリーの中国進出が加速している現在、ペースの閉廊は進出を考えている他のギャラリーにどのような影響を与えるのか。今後の動向に注目したい。