1位はルアンルパ。2022年アート界の「Power 100」ランキングが発表

イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が毎年発表している、アート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」。その2022年版が発表された。

ドクメンタ15より、カッセル市内中心部にオープンした「ルルハウス(ruruHaus)」 Photo by Gianni Plescia

 イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が毎年発表している、アート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」。その2022年版が公開された。

 『ArtReview』によると、Power 100は世界中から集まった30名以上のパネリストと協力者の意見によって形成され、過去12ヶ月間に活動していること、その活動が現在のアート界の発展を形成していること、そしてその影響がローカルではなくグローバルであることの3点が考慮され、決定される。

 今年1位に輝いたのは、5年に一度開催される国際展「ドクメンタ15」で芸術監督を務めたインドネシアのアート・コレクティブ「ルアンルパ」。ルアンルパは前年3位にランクインしており、開催年にその順位を上げたかたちだ。

 ドクメンタ15では、一部作品が反ユダヤ主義(アンチセミティズム)であると指摘され撤去。また総監督が辞任するなど、様々な議論を生んだ。いっぽうで、アジアからの初の芸術監督であり、参加作家の多くが「グローバルサウス」から選ばれた点、そして人々と知的・物的資源を共有し分かち合う「ルンブン」というモットーを掲げた点など、高い評価も受けている。

 『ArtReview』はルアンルパについて、次のようなコメントを寄せている。

排他的で階層的な古いモデル・古いやり方は、いま、アートワールド全体で試されている。20年前、かつて著名なキュレーターが「次のドクメンタはアーティストがキュレーションするべきだ」と意見したことがあった。しかし、キュレーターをアーティストに置き換えたからといって、権力の構造が変わるわけではなく、頂点に座る個人が変わるだけである。ルアンルパの権力は、その構造を解きほぐすことにあった。あとは、みんなが次にどうなるかを考えなければならない(編集部訳)。
メイン会場のひとつ、「ドクメンタハレ」の入口 Photo by Gianni Plescia

 2位となったのは、世界最古の国際ビエンナーレであるヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展でアーティスティックディレクターを務めたチェチリア・アレマーニ。ロシア館の不参加や「ウクライナ広場」の急遽設置など、世界情勢が影響した今回、アレマーニがとくに光を当てたのは女性アーティストだった。男性優位のアート界。だが、ジャルディーニとアルセナーレ会場で展示された213アーティストのうち男性は22名のみというかたちとなり、「女性のビエンナーレ」とも評された。

アルセナーレ会場に展示されたシモーネ・リーの《Brick House》(2019) 撮影=飯田真実

 3位は「Unions(組合)」が初めてランクインを果たした。コロナ禍によって浮き彫りとなった美術館業界の労働環境。今年はアメリカ全土の美術機関で労組結成の動きが広がりを見せたことがこのランクインにつながった。

 100位のうち、日本からは森美術館館長の片岡真実(69位)とTake Ninagwao代表の蜷川敦子(93位)の2名がぞれぞれランクイン。片岡は「あいち2022」の芸術監督の実績が評価されたかたちだ。また蜷川は今年2度目の開催を迎えた「アートウィーク東京」の共同設立者であり、同イベントの功績が称えられての初のランク入りとなった。

 なお、昨年首位だったNFT(非代替トークン)の取り扱いをするための規格を指す「ERC-721」は姿を消した。今年の「Power 100」ランキングはこちらから閲覧可能。

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