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作品撤去に運営総監督の辞任。反ユダヤ主義で揺れる「ドクメンタ15」の経緯を追う

「ドクメンタ15」が開幕を迎えてから約1ヶ月。1つの作品で明確な反ユダヤ主義(アンチセミティズム)が指摘されたことで、ドイツ連邦議会の文化委員会でも話し合いが続いている。ここ数年ドイツ全体で続けられてきた議論にも関わっており背景は複雑だ。ドイツからその経緯を追ってレポート。ナチズムに関する教育センター所長に話を聞きながら、表現の自由についても考える。

文=河内秀子

黒幕が掛けられた「タリン・パディ」の巨大バナー《People's Justice》。18日の開幕後に黒幕がかけられ、21日の夜に撤去された ©getty images

「ドクメンタ15」が開幕を迎えてから約1ヶ月が経った。

 開幕後、インドネシアのコレクティブ、「タリン・パディ」の作品《People's Justice》に明確な反ユダヤ主義(アンチセミティズム)が見られると指摘されたため、ドイツ連邦議会の文化委員会で議論が行われている。結果、運営を総括する総監督は辞任を表明。

 開幕前からの反ユダヤ主義疑惑の背景には、2019年からの連邦議会におけるBDS決議に関する議論があり、状況は複雑だ。それに対し、開幕後に展示された作品に対する反ユダヤ主義の指摘は明確である。ドイツから、現時点までの経緯を追ってレポートしたい。

 最初にはっきりとさせておきたいのは、ドクメンタ15の反ユダヤ主義問題に関わるとされる作品は2つあり、それぞれ問題点が違うことだ。ひとつは開幕前に問題となったパレスチナのコレクティブ「ザ・クエスチョン・オブ・ファンディング」と彼らの作品《Guernica Gaza》、もうひとつは開幕後に指摘されたインドネシアのコレクティブ「タリン・パディ」の巨大バナー《People's Justice》である。

 ザ・クエスチョン・オブ・ファンディングに関しては、開幕前にコレクティブの活動がイスラエルボイコット運動(Boycott, Divestment and Sanctions、以下、BDS)に近しいのではないかと疑問視されたが、作品に関しては開幕後、“イスラエルに対する批判“として受け入れられ、展示が続いている。それに対し、タリン・パディの巨大バナー《People's Justice》は、一部にユダヤ人という人種に対する悪意のある偏見を広める“反ユダヤ主義的”な絵があると問題視され、閉幕後にドクメンタ15の運営側が撤去した。

 まず、主に開幕前に指摘されていたザ・クエスチョン・オブ・ファンディングに対する批判について、経緯を振り返ってみたい。

ザ・クエスチョン・オブ・ファンディングのメンバーであるガザ地区のブレイジ難民キャンプ生まれのアーティスト、モハメッド・アル・ハワージリの「Guernica Gaza」シリーズの一部 ©getty images
開幕前に行われたプレス向けの内覧会。《People's Justice》のバナーはほころびがあったため展示が遅れていた ©Gianni Plescia

ドイツの「BDS決議」を背景とした、開幕前のドクメンタ15批判

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