震災の記憶を見つめ、古代の逗子に耳を澄ます
旧本多邸では、逗子在住のアートコレクター、上籔英二のコレクションから、東日本大震災や自然と人間の関係などに目を向けた映像作品も紹介されている。

そのひとつ、Chim↑Pom from Smappa!Groupの《気合い100連発》(2011)は、東日本大震災直後の福島県相馬市で撮影された映像作品だ。メンバーと被災した人々が円陣を組み、カメラに向かって100の言葉を叫ぶ。作品では、災害を経験した人々の声と身体を通じて、その場に共有された感情や時間が記録されている。

キュンチョメの《New Japan Paradise》(2012〜13)では、福島の帰還困難区域にある黒いフレコンバッグに青い円を描き、映像の色彩を反転させることで、その円が日の丸として現れる。

潘逸舟の《戻る場所》(2011)は、作家自身が海に向かって衣服を脱ぎ捨てる様子を撮影し、映像を逆再生することで、投げ入れられた衣服が再び身体へと戻っていく様子を映し出す。これら3組の作家たちの作品はいずれも震災後に制作されたものであり、異なる方法から、人間と自然、社会との関係を捉え直している。

さらに、旧本多邸の特徴的な屋根裏では、大気の入り江による《逗子の入り江》(2026)が展開されている。屋根を支える梁が船底の肋骨のように連なるこの空間は、音や気配に意識を向けるリスニング・インスタレーションの場となっている。

作品の背景にあるのは、逗子という土地の古代の姿だ。現在の市街地は、海面が現在よりも高かった縄文海進期には入り江だったという。また、旧本多邸から望む山には、神奈川県内最大級の前方後円墳である長柄桜山古墳が残されている。作品名に用いられた英語の「sound」は、「音」であると同時に「入り江」や「海峡」を意味する言葉でもある。古代の地形や、人々が音を通して自然や神々と関係を結んできた歴史を手がかりに、耳を澄ますという行為を捉え直す。週末には、この空間を用いた「音を聴く茶会」も実施される。



















