東京湾岸エリアを舞台とする国際美術展「TOKYO ATLAS」が開幕した。会期は12月20日まで。実行委員長を務めるのは青柳正規。アーティスティック・ディレクターには、建畠晢(草間彌生美術館館長)と三木あき子(直島新美術館館長)が名を連ねる。
本展のタイトル「ATLAS」は、世界を支える神話上の巨人アトラスと「地図帳」を意味する言葉に由来する。街なかに点在する作品を巡る行為そのものを、新たな地図を描く体験へと転換させる構想だ。アートを都市の日常に挿入することで、既存の風景やインフラ、歴史の記憶に新たな視座を与えることを試みる。
この美術展は、当初2025年に開催を予定していた「東京お台場トリエンナーレ2025」を基盤とする。同トリエンナーレの準備で積み上げたものを活用し、都が主導する新体制のもと、東京都歴史文化財団が新たに参画。世界で活躍するアーティストをはじめ、これまで都が支援してきた若手作家の実践、さらには美術展を支える多様な仕事・役割に光を当てる場として再スタートを切り、ようやくのお披露目となった。
実行委員長の青柳は本展の開催に際し、「江戸時代からウォーターフロントとしての役割を担ってきたこのエリアの記憶を、刷新していく意義がこの美術展にはあるのではないか」「とくに若い世代には、共感や違和感を通じて、東京の新しい姿や可能性を感じてほしい」と語る。またディレクションを担った建畠と三木は、「『都市の野生』の顕在化」「場所性をアーティストの視点を通じて浮かび上がらせる」といった本展の方向性を提示した。
主な会場は、青海、台場、天王洲の3エリア。各エリアの作品と見どころを巡っていく。
青海エリア(テレコムセンタービル、青海南ふ頭公園/地下駐車場)
アートの国際取引の拠点としても関係性の深い保税地域を擁し、大型貨物コンテナや大型クレーンが並ぶ青海エリアは、お台場や天王洲とは雰囲気が異なり、普段は一般の人々が足を運ぶ機会が少ない場所だ。ここでは、テレコムセンタービルや青海南ふ頭公園、そして同敷地内の地下駐車場がメイン会場となる。

テレコムセンターの中心となるアトリウムに現れたのは、今年惜しまれながらも逝去した草間彌生による2つのバルーン作品《ヤヨイちゃん》(2012/2023)と、日本初公開となる《宇宙へ行って見た愛の花束》(2021)だ。この組み合わせは生前の草間の構想によるものであり、「芸術と愛の力で世界を救う」をテーマに掲げ続けた彼女から現代へのメッセージでもあるだろう。まさに本展のハイライトと言える展示だ。


青海南ふ頭公園は、東京港の国際的な海運を見渡せる場所に位置する。普段、青海駅に降り立つ機会はそう多くないが、眼前をゆく巨大な貨物船やコンテナターミナルといった流通拠点としての東京の湾岸の姿に思わず目を奪われる。
ここでは、巨大なボトルのなかで1週間生活するアブラハム・ポワンシュヴァルによるパフォーマンス《Bouteille》が実施されるほか、デュッセルドルフを拠点する竹岡雄二が公共彫刻の本質を捉え直す作品を展示。また、ロンドンを拠点とするハルーン・ミルザは、公園内のオブジェを活用し、8つのスピーカーによる独特な音響空間を立ち上げた。


さらに公園内を散策すると、柵の中で暮らす2匹のヤギに出会う。これは東京藝術大学小沢剛研究室による「ヤギの目」プロジェクトだ。多様なメンバーがヤギとともに送る日々の営みを通じ、現代社会における持続可能な表現や、次世代のコミュニティのあり方を模索している。会場では、同プロジェクトのこれまでの歩みもあわせて紹介されている。









































