大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開催【3/3ページ】

 第4章「広告―『機能』する構成」からは、オブジェ、写真、絵画といった芸術と呼ばれる領域から、さらに広く目を向けシュルレアリスムを拡大する。デペイズマンやコラージュ、フォトモンタージュなどシュルレアリスムにおいて多用されたテクニックを発揮した広告に注目する。

クルト・セリグマン《国際シュルレアリスム展》 1938年 サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託)【後期展示】
フリッツ・ビューラー《ポスター「ジオデュの帽子」》 1934年 宇都宮美術館【後期展示】

 第5章「ファッション―欲望の喚起」は、シュルレアリスムとモード、ファッションとの関係に迫った構成となる。服飾そのものや服飾雑誌にシュルレアリスム的手法が用いられるだけでなく、服をまとうマネキンを身体のオブジェ化としてとらえるなど、シュルレアリストたちのインスピレーションの源ともなった。なお本章では、シュルレアリストたちとの交流が深かったデザイナー・スキャパレッリの作品も紹介される。スキャパレッリの代名詞ともいえるショッキング・ピンクのドレス(イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」、島根県立石見美術館所蔵)をはじめ、独自のデザインが施された香水瓶やジュエリーなど、多岐にわたるスキャパレッリ作品も見どころのひとつ。

エルザ・スキャパレッリ《イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」》 1938年 島根県立石見美術館【前期展示】
エルザ・スキャパレッリ《香水瓶「スリーピング」》 1938年 ポーラ美術館

 最後の第6章「インテリア―室内空間の変容」では、家具に焦点が当てられる。違和感を引き起こして現実に揺さぶりをかけるシュルレアリスムにとって、日常生活の場である室内の安定した秩序を転覆させることには大きな意味があった。本章は、家具を奇妙なオブジェに置き換えることで、シュルレアリスムによる空間への関与に挑戦した動きについて紐解く内容となる。

 なお本展の関連イベントとして、速水豊(三重県立美術館長)を迎えた講演会「シュルレアリスムと『偶然の出会い』?―コラージュ・オブジェ・日本」や担当学芸員によるギャラリートークも開催される。

編集部