フランスの詩人、アンドレ・ブルトンが中心となり推し進めた「シュルレアリスム」は、20世紀においてもっとも大きな影響を及ぼした芸術運動だ。これに賛同した思想家たちは、理性を中心とする近代的な考え方を批判し、精神分析学の影響を受けて無意識の世界を探究することで「超現実」という新たなリアリティを追い求めた。
日本においては、1928年にブルトンが発表した『シュルレアリスムと絵画』が、瀧口修造(1903〜79)によって30年に日本語に翻訳されたため、30年代を通して「超現実主義」という訳語のもと最新の前衛美術のスタイルとして一大旋風を巻き起こした。こうした広がりのなかでシュルレアリスムは、第二次世界大戦へと向かう時代の閉塞感と響き合い、次第に現実離れした奇抜で幻想的な芸術として受け入れられていくようになった。
そして今回、シュルレアリスム運動からどのようにシュルレアリスム絵画が生まれたのか、シュルレアリスム誕生から日本における超現実主義の展開に焦点を当てる展覧会展覧会「シュルレアリスムと絵画」が、箱根のポーラ美術館で開催される。本展では、「偏執狂的=批判的」方法という独自の理論にもとづいて絵画を制作し、美術だけではなくファッション界をも巻き込む大きな流行を創出したサルバドール・ダリのほか、マックス・エルンスト、古賀春江、三岸好太郎、瑛九、吉原治良などの作品を見ることができる。会期は12月15日~2020年4月5日。