シュルレアリスムでジェンダー、精神分析論、構造主義を表現? ビルギット・ユルゲンセンの実践をたどる

オーストリアの美術家、ビルギット・ユルゲンセンの個展が東京・北青山のファーガス・マカフリー東京で開催される。ドローイングや描写方法を学術的に学び、シュルレアリスム的な視覚言語を用いてジェンダー、家庭主義、社会生活といった様々な問題に斬り込んだユルゲンセン。本展では、各時代のユルゲンセン作品を通じてその足跡をたどることができる。会期は9月28日〜10月27日。

ビルギット・ユルゲンセン Untitled(my nephews) 1988 © Estate Birgit Jürgenssen, Vienna; Courtesy Galerie Hubert Winter, Vienna

 ビルギット・ユルゲンセンは1949年オーストリア生まれ。71年にウィーン応用美術大学を卒業後、ウィーン・アクショニストの暴力的で逸脱した男性性、そして保守的なオーストリアのブルジョワに支配されたウィーンのアートシーンに閉塞感を感じ、当時世界中で起きていたフェミニスト・アヴァンギャルド運動に参加。そのなかで重要な役割を担った美術家として、80年から97年にかけてウィーン応用美術大学とウィーン美術大学で教鞭を取った。 

 ドローイングや描写の手法を学術的に学び、芸術表現を通じてフェミニズム、精神分析論、構造主義といった同時代における様々な問題に言及したユルゲンセン。70年代前半より、シュルレアリスムの要素を含んだ視覚言語を用いてジェンダー、家庭主義、社会生活といった同時代の問題をテーマに夢幻的なドローイングを描き始める。

 そのドローイングは古典的なヌードのシルエット、人気ハリウッド映画のスチール写真、本や雑誌などから切り出したイメージ、またユルゲンセン自身が撮影した写真の一部など、多様なイメージから引用されたもの。

 今回、東京・北青山のファーガス・マカフリー東京で開催される「ビルギット・ユルゲンセン」展では、紙と写真を用いたユルゲンセン作品をピックアップ。9点のドローイングのほか、これまで展示の機会が少なかった70年代のマルチメディア・コラージュ作品、80年代後半から90年代前半にかけての写真作品および写真をベースとしたコラージュ作品が展示される。

 ユルゲンセンがどのように素材と制作プロセスをとらえていたかという点に焦点を当てて構成された本展。各時代の作品を一堂に展示することで数十年にわたってユルゲンセンが探求しつづけた表象、皮肉、オリジナリティを明らかにし、その独創的な実践をたどることを試みる。 

編集部

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