東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」が開催される。会期は3月29日〜9月8日。展覧会ディレクターは山中俊治。
本展では、山中が大学の研究室で様々な人々と協働し生み出してきたプロトタイプやロボット、その原点である山中のスケッチを紹介するとともに、専門領域が異なる7組のデザイナーやクリエイター、科学者、技術者らのコラボレーションによる多彩な作品を展示。最先端技術や研究における先駆的な眼差しとデザインが出会うことで芽生えた「未来のかけら」を通じて、不確かな未来に対する可能性やデザインの楽しさに向きあうきっかけを創出するものとなる。
いつの時代も、最先端の科学技術とデザインはすぐそばにありました。科学者が生み出す新しい知識や技術はデザインを通じて人々の元へ届けられました。デザイナーたちによって開かれた新しいライフスタイルは、次の研究のトリガーであり続けました。しかしながら、科学者たちの本当の関心は大いなる真理を探究することにあり、デザイナーたちの目標は人々の幸福な体験や豊かな社会の実現にあるので、両者は必ずしも同じ道を歩むことはできません。科学とデザインは近くにいながら、その間には越えがたい溝もあるのです。
そのような緊張感をはらんだ科学とデザインの関わりには、初めてかのような新鮮な出会いがあり、葛藤があり、ドラマがありました。そして時代ごとに、自動車や家電、コンピュータ、スマートフォン、SNSなど、私たちの生活が一変するようなイノベーションを生み出してきました。
本展は、今まさに起こっている科学とデザインの邂逅により芽生えつつある「未来のかけら」を探るものです。本展ディレクターである山中は2001年以降、先端技術の研究者たちとともにちょっと未来を感じさせるさまざまなプロトタイプをつくってきました。2013年に東京大学に教授として着任してからは、まだ実用化されていない先端技術に形を与え、研究者と共に未来を探る「Design - Led X (価値創造デザインプロジェクト)」をスタートさせました。
企画展「未来のかけら」では山中のそうした活動をコアに、研究者とクリエイターたちの新たな「出会い」を集めます。最先端のロボティクス、積層造形、構造形態学、身体拡張、バイオエンジニアリングなどの研究者たちと、デザイナー、アーティストたちがタッグを組んで未来のかけらを錬成します。サイエンスフィクションのようなプロットにとどまらず、質感や動きを伴った体験を共有できるリアルな物語の断片です。実験室で生まれたばかりのピースを繋ぎ合わせてまだ見ぬ世界を描くのは、ご来場いただく皆さんです。
(山中俊治「ディレクターズ・メッセージ」より抜粋)
参加クリエイター・プロジェクトは、荒牧悠+舘知宏、稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE + Nature Architects、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)+山中俊治、東京大学DLX Design Lab +東京大学 池内与志穂研究室、nomena+郡司芽久、村松充(Takram)+ Dr. Muramatsu、山中研究室+今仙技術研究所・稲見自在化身体プロジェクト・臼井二美男・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・岡部徹・河島則天・斉藤一哉・SPLINE DESIGN HUB・鉄道弘済会義肢装具サポートセンター・新野俊樹・Manfred Hild・吉川雅博。
なお、会期中には関連プロジェクトとしてオンライン上の架空のギャラリー「ELEMENT GALLERY」で本展に関連する展示も実施される予定だ。