バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を24年間務め、イギリスのみならず世界の名だたるバレエ団に作品を提供するなど名振付家として知られるデヴィッド・ビントレー。そのビントレーが手がける3作品を一挙に上演する「ALL BINTLEY(オール・ビントレー)」が、スターダンサーズ・バレエ団によって開催される。日程は3月16日・17日の2日間。
ビントレーはイギリス・ハダースフィールド出身。ロイヤル・バレエ・スクール卒業後、サドラーズウェルズ・ロイヤル・バレエ団(現バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)に入団。卓越したキャラクター・アーティストとして活躍して以降は、英国ロイヤル・バレエ団レジデント・コレオグラファー(1986~93年)、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団芸術監督(1995〜2019年)を務めてきたた。また日本との関わりも深く、2010~14年は新国立劇場の舞踊芸術監督を兼任。舞踊界への功績から2001年に大英帝国勲章CBEを、2020年にKBEを授与されるなど、バレエの世界では欠かすことができない人物だ。
今回の「ALL BINTLEY」で上演される3作品を紹介しよう。
まずは日本初演となる「The Dance House」。同作は、「死の舞踏」からインスピレーションを得て、友人の死への哀歌としてビントレーが振り付けたバレエ。1995年にサンフランシスコ・バレエ団で初演され、日本での上演は今回が初めてとなる。注目は美術だ。この作品のセットと衣裳のデザインを手掛けたのは、アメリカの画家ロバート・ハインデル。スタジオでのひたむきなダンサーの姿をとらえた数々の名作を生み出し、“現代のドガ”とも評されたハインデルは、ダイアナ妃や高円宮殿下が愛した画家としても知られている。
ビントレーとハインデルが友人であったことから実現したというこのコラボレーション。まるで絵画に命を吹き込まれたかのように躍動するダンサーの舞は必見だ。
次は世界初演となる「雪女」だ。同作は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)による「雪女」を原作としたもの。ビントレーは新国立劇場舞踊芸術監督として日本滞在中に同作に出会い、それがストラヴィンスキーのバレエ「妖精の接吻」と似ていたことに驚いたという。そこから着想を得て、雪女と巳之吉(みのきち)の間の恐ろしくも切ない出来事を描いたバレエが誕生する。世界で活躍する舞台美術デザイナー、ディック・バードが手がける舞台装置・衣裳も注目したい。
3作目はスコットランドの歴史を想起させるビントレーの秀作「Flowers of the Forest」だ。スコットランドの民族舞踊を取り入れた複雑なステップが特徴で、光と影を象徴するかのような対照的な2つのパートで構成。同作は2019年の吉田都引退公演でも披露され、日本ではスターダンサーズ・バレエ団のみが上演している貴重な作品となっている。
日本ではほかに見ることができない3作品を一挙に堪能できる今回の「ALL BINTLEY」。この機会をお見逃しなく。