ドローイングの概念を拡張し、現代における表現の可能性を更新し続けるアーティスト・鈴木ヒラク。その過去最大規模の個展「今日の発掘」が9月16日〜12月19日の会期で、群馬県立近代美術館で開催される。
鈴木は1978年宮城県生まれ、神奈川県育ち。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなど各地で滞在制作。09年に金沢21世紀美術館で開催された「愛についての100の物語」展をはじめ、森美術館、アーツ前橋、東京都現代美術館などの美術館で多数の展覧会に参加している。
本展では、最新シリーズ「隕石が書く」(2023)40点による大規模なインスタレーションと、近作である「Constellation」(2018‒21)、「Interexcavation」(2019)各シリーズからの作品、そして現地制作される壁画などが展示される。
「描く」と「書く」の境界をテーマに作品を続ける鈴木にとっての線は、言葉と絵、こちら側とあちら側、自己と他者をつなぎ、相互浸透を促すメディアだという。「線をかく行為=ドローイングは、森羅万象にあまねく存在する(見えない)線の発掘であり、さらに線をトンネルのような中空の通路、あるいはチューブ(管)ととらえれば、人間と自然、主体と客体といった二項対立を越え、世界あるいは宇宙と一体化するための手段」(プレスリリースより)となる。
最新シリーズ「隕石が書く」のタイトルは、フランスの思想家ロジェ・カイヨワの著書『石が書く』(1970)を参照したものであり、「宇宙空間を移動する石が反射する光の軌道など様々な記号を集積し、作家が身近な環境で拾った匿名の石が孕む膨大な情報と呼応しながら、人類史を遙かに超えた時間軸において生成され続ける線を新しい言語として画面に刻み込む試み」だという。
展示会場も注目ポイントだ。昨年末に逝去した建築家・磯崎新(1931〜2022)の設計による同館の現代美術棟を使った会場では、展示室から展示室へ、描くこと/書くことの起源と未来を求めて、人類最古の壁画が残された洞窟から人知を超えて生成と消滅が繰り返される宇宙空間へと、鈴木による線を連ねていく。
なお初日には、鈴木によるライブドローイングとトークが開催。会期中には、十和田市現代美術館館長・鷲田めるろとのトークや、サウンドアーティスト・FUJI|||||||||||TAとのライブなども予定されており、本展にあわせて鈴木の初エッセイ『ドローイング 点・線・面からチューブへ』(左右社)や、展覧会のカタログも刊行される。