2023.5.13

作家はいかに「出来事との距離」と向き合ってきたのか。「出来事との距離―描かれたニュース・戦争・日常」展が町田市立国際版画美術館で開催へ

ニュースや戦争を描いた作品に触れ、過去、現在のアーティストが「出来事との距離」にいかに向き合ってきたかを探る「出来事との距離―描かれたニュース・戦争・日常」展が東京・町田市の町田市立国際版画美術館で開催される。会期は6月3日〜7月17日。

松元悠 蛇口泥棒(長浜市、東近江市、砺波市) 2022 リトグラフ 個人蔵
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 ニュースや戦争を描いた作品に触れ、過去、現在のアーティストが「出来事との距離」にいかに向き合ってきたかを探る「出来事との距離―描かれたニュース・戦争・日常」展が東京・町田市の町田市立国際版画美術館で開催される。担当学芸員は町村悠香。

 ニュースや戦争を題材とした作品からは、時代や立場によって表現方法が違うことに気づかされたり、時間が経過することでようやく伝えられた出来事であることが読み取れるものがある。本展は、それらの視点から選定された同館のコレクションや若手作家による作品を約150点にわたって紹介するものだ。

 会場は、1章「ゴヤが描いた戦争」2章「戦地との距離」3章「浮世絵の見立てと報道」4章「ニュースに向き合うアイロニー」5章「若手作家の作品から」の全5章で構成される。主な出展作家は、フランシスコ・ゴヤ月岡芳年、小林清親畦地梅太郎浜田知明馬場檮男石井茂雄郭徳俊松元悠土屋未沙、小野寺唯、ソ・ジオ。

フランシスコ・ゴヤ『戦争の惨禍』より「見るにたえない」1810〜20 エッチング、ラヴィ、ドライポイント、ビュラン 町田市立国際版画美術館蔵
篠原清興 栄城湾上陸后之露営 明治28年(1895) 大判錦絵三枚続 町田市立国際版画美術館蔵
月岡芳年『魁題百撰相』より「森蘭丸」 明治元年(1868) 大判錦絵 町田市立国際版画美術館蔵

 なかでも本展で特集される松元悠は、メディアやSNSが伝えるニュースの現場を訪問。想像を働かせながら当事者のすがたを自画像で描くことで、日常と地続きにある「事件と人間の不可解さ」に分け入る作家だ。現代作家によるこの視点は、本展への理解をより深めるための注目ポイントとも言えるだろう。

松元悠 悪い神様の耳を食べる(佐野市) 2020 リトグラフ 個人蔵

 なお、本展関連イベントとして、松元によるアーティスト・トークや担当学芸員の町村によるギャラリートーク、江澤隆行のピアノ演奏によるプロムナード・コンサートも実施されるほか、特集展示「大正・昭和初期の東京風景 織田一磨を中心に」(6月14日~9月24日)も同時開催となる。こちらもあわせて足を運びたい。